速攻できめる
騎士団宿舎の自分の部屋にいると、ウォルターが戻って来た。
手には手紙が握られている。
「おい、ヴォルフ! 婚約破棄じゃない婚約解消だ!」
「え?」
「アンジェだよ!
とうとうライアン殿下と婚約解消したんだ」
そう言いながら、手紙を顔の前に出された。
そうか、とうとうその時が来たんだ。
親父にはもう話してある。
もともと自分の嫁ぐらい自分で連れて来いと言うのが、辺境伯爵家の家訓みたいなものだ。
俺が決めた事に家族の反対はない。
「ウォル、ラフォール侯爵に取り次いでくれ、明日正式にアンジェリーナ嬢への婚約の申し込みに行きたいと」
ウォルターがニヤっと笑って
「承知した」
と言って肩を叩いた。
そう、話が公になる前に手を打たないと。
なぜか?
それは、ひとつに婚約解消された彼女が傷物扱いされたり、誹謗中傷されることのないように、早めに新しい婚約を結ぶ必要があること。
そして、もうひとつ彼女が独り身になれば、すぐに婚約の申し込みが殺到する可能性がある事。
これが問題だし、心配なのだ
彼女に一番近い存在だと思いたいが、ゆっくりしてて横から拐っていかれたら、後悔どころの話ではない。
だからこそ、速攻で決めなければ。
「団長の所に行って、明日の休みをもらってくる!」
そう言って、俺は部屋を飛び出した。
◇◇◇◇◇◇◇
「旦那さま、ウォルター様から使いが…」
「うん? 何か急ぎの用件でも出来たか…」
ラフォール侯爵は手紙を読み
ニヤリと笑った。
そうか、ヴォルフ殿は随分と早く動かれたな。
事前に相談はされていたから、別段反対するつもりもないが、彼は娘を守るために少しでも早く新たな婚約を結ぼうとしてくれているのだろう。
彼の事は息子の友として学生の頃から見てきている。
人柄も申し分ない
何より彼なら娘を蔑ろにしたり、悲しませるような事はしないだろう。
私の方も父親である辺境伯爵に挨拶をせねばなるまい。
私と彼とも学生の頃からの気心の知れた仲だった。
そう考えると、一番いいところに落ち着いた事になるだろう。
アンジェリーナの気持ちはこの前の2人のダンスを見れば、嫌とは思えないが…
まあ、一応
先に知らせておこう。
侯爵は侍従長を呼び
アンジェリーナが帰ったら、書斎に来るよう言伝てた。




