引き続きトーマス・セルビ視点
温室の前で、待機していると、思ったより早くアンヌリーブ様が出てきた。
なんだか、フラフラしているような気もするが…
「王女殿下? どうされました?」
はっ!としたアンヌリーブ様は私を見てやっと平常心に戻ったような顔をした。
「いえ、セルビ様待っていてくれたのですか?」
「ええ、殿下は先に帰られましたが、アンヌリーブ様を1人で帰す訳には行きませんので」
「ありがとう、面倒をかけました…」
「いえ、そんなことは…
何か気になることでもありましたか?」
「…いえ」
馬車に乗り、落ち着いて来たのか王女殿下はポツポツ話を始めた。
要はライアン殿下があまりに婚約者の話をしない。
いると聞いていた婚約者の影が全然ない。
殿下本人に聞いても曖昧な答えしか返ってこない事に疑問ばかりが浮かんだ。
その事をジョセフに相談したら、アンジェリーナ様が同じクラスの方だと教えられたので自分で確かめようと声をかけたのが先程だったらしい。
ジョセフ! 余計なことを!
「いつもお優しくて常識的な殿下がなぜ婚約者のアンジェリーナ様には自分から歩みよりもなく、お互いに疎遠になっているのです?」
「それは私からはなんとも…」
「私が見た限りアンジェリーナ様のどこがそんなにお気に召さないのか、わかりませんわ」
まあ、今のアンジェリーナ様を殿下は知らないからな。
遠征から帰って来てから1度も彼女に会いたいと言わないから今だに気がついていない。
その要因の一部は目の前にいるアンヌリーブ様のお陰もあるが…。
今、殿下の頭の中にはアンヌリーブ様でいっぱいだろうしな。
これは殿下に報告した方がいいのか?
いや、王妃様に報告が先か。
「ひとつ言えることは、アンジェリーナ嬢に非はありません。彼女はずっと殿下の為に尽くしてきて、王妃教育も頑張ってこられた。
しかし、殿下との距離が縮まる事がなかったために、心が折れてしまわれたのですよ」
「そんな…」
「でも、人の心を無理やり変えるのは無理ですので、ライアン殿下の心もアンジェリーナ嬢の心も周りがどうこう出来るものではありませんので、そっとしておいて頂きたいのです」
じっと考えていたアンヌリーブ様は大きく息を吐き出して
「そうですね、どうにかできるなどと、大それたことは考えておりません。
私が口を出すことではないわね」
「王女殿下はこの事は気になさらず、変わらずライアン殿下との交流をお持ちください」
「わかりました、話を聞いてくれてありがとうセルビ様」
王宮に着くと、ライアン殿下が待っていた。
公務の方は早々に切り上げたようだ。
アンヌリーブ様をエスコートして行かれたので、私はそのまま王妃様へ報告に行く事にしよう。




