ブレイクタイム
━王妃視点━
アンジェリーナが退出した後、1人で思いを巡らす。
やっとアンジェリーナが前向きになってくれたようだ。
あの子の全てを諦めたような顔を見るのは心が締め付けられるようだった。
アンジェリーナはかつての自分と同じ立場。
あの頃私はまだ自分の未来は幸せだと疑わなかった。それが直ぐに崩れ去ってしまう砂の城とも知らずに…
しかし、アンジェリーナは砂の城だと分かっていながら、あえてそこへ向かっている。
しかもあの子の砂の城までも道はイバラだらけで1つも幸せが見えないにもかかわらず逃げる事さえ諦めている。
砂の城の住人は私1人で充分だ。
自分の分身、自分の娘のように思うあの子を私は救いたい。
今日初めて自分の気持ちを吐露してくれたことに安堵し希望を持つことが出来た。
ライアンなど、王位を継がせる気はない。
だからこそ早く息子と言うことになっているあの男から、あの子を解き放ってあげなければ。
見ていてアンジェリーナ…
もうすぐあなたを自由にしてあげる。
━トーマス・セルビ視点━
ライアン殿下が遠征に強制同行させられた。
今回の試験結果が悪すぎた罰と言うことになっているが、これは王妃様の策略だった。
私はライアン殿下の側近候補として、同じ学年同じクラスでいつも行動を共にしている。
でも、実は王妃様より密命を受けて殿下の行動やアンジェリーナ嬢の様子、学校での噂など、全てを報告する役目を仰せつかっている。
アンジェリーナ様が変わった事、それに気づいていない殿下の事、それらを報告したのも私だ。
その結果、王妃様はアンジェリーナ嬢から殿下を引き剥がす作戦に出られ、殿下がアンジェリーナ嬢のパーティーに行けないようにするため、遠征へ行かせるよう陛下に進言したのだ。
殿下は感情を表に出さず常に冷静でいるアンジェリーナ嬢が気にくわないと何度も言って相手にしなかったが、いざアンジェリーナ嬢の方から何もかまって来なくなると、面白くないのだ。
全くアンジェリーナ嬢も気の毒に…
私は以前から彼女に同情していた。
彼女が殿下のもとへ来なくなり、髪型や化粧を変えたのには驚いたが、よく思いきったものだと、感心もした。
今まで散々彼女を虐げてきた殿下に今の彼女の事を言うつもりはない。
彼女が隠し続ける限り私も協力しようと思う。
━ヴォルフ視点━
アンジェリーナ嬢… 大きなエメラルドグリーンの瞳を見開いてこっちを見る顔をまじまじと見てしまった。
とても美しく成長した友人の妹はどうやら私の事を覚えていてくれたみたいだ。
知的で大人の女性になった彼女だか、昔の愛らしさも残している上に私のような武骨な男にもちゃんと花を持たせてくれる気遣いまでしてくれる。
王子の婚約者などでなければ、友人に仲を取り持ってほしいくらいだった。
こんなに可憐で美しい婚約者に対して王子の対応はどうしたことか?
彼女の話だといつもの事のように言っていた。
彼女はこの婚約が本意ではないのか?
幸せになれない相手なのだとすると、辛いな…
酒の入ったグラスをあおり、ため息をついた。




