王妃様からの報告
「ふー 取り乱してごめんなさいね。
侍女を下がらせていて、良かったわ」
王妃様と会う時はいつもそうなのですが、部屋には私達2人だけです。
そのせいで王妃様も気を許してしまうのでしょう。
王妃様がポットを持とうとするので、慌てて止めます。
「王妃様、私がやりますわ」
王妃様からポットを取り上げてカップに注ぎます。
「2人だけの時はそんなに気を遣わないで。
言ったでしょ、あなたは娘も同然だって」
「ですが… いえ、それなら娘として私がお茶を入れて差し上げます」
とニッコリ笑って答えます。
「ふふふ、分かったわ」
お茶を飲んでお互いに落ち着きました。
「オードラン侯爵は他の貴族や商人の弱みを調べてそれを盾に自分に有利な契約をさせたりしていたらしいわ。
しかも自分の地位よりも下の者に対しての事だから、誰も声をあげる事も出来ず皆泣き寝入りするしかなかったようよ」
王妃様はオードラン侯爵家を調べた報告をしてくださいました。
話を聞く程に、バルバラ様は父親の真似をしていたとしか思えませんね。
「何から何まで親の真似をしたと言うことですね。
今回の拉致事件といい、ミレーヌ様達への脅迫といい。
でも、侯爵はいくら娘でも他の貴族を脅迫するような場面を見せていたのでしょうか?」
私は疑問を口にした。
だって最初にミレーヌ様やノエラ様を自分の思い通りにしようとしたのはまだ12、3才の時の事だと思うのだけれど。
「普通の大人なら、子供にそんな話をしないし、見せもしないでしょうね。
だって恥ずかしい行いな訳だし。
でも、オードラン侯爵にとってはそれが普通の事だったのでしょう。
だから娘のいる前でも平気でそんな話をしたり、金で雇った者達に指示を出したりしていたそうよ。
愚か者は行いも考えも愚かだと言う事かしら」
私は王妃様の話に呆れるばかりでした。
「バルバラ嬢は北の修道院に送られると聞きました」
「ええ、まだ子供と言ってもいい歳だし、周りのひどい大人の影響があったのが1番の原因だから」
北の修道院は貴族の女性の更正の為に使われる事がしばしばある修道院だと聞いた事があった。
侯爵家は取り潰されても、今まで貴族令嬢として生きてきたバルバラに対して王妃様は慈悲を施したのかもしれない。
性格はどうあれ、やはりちゃんと教育されなかった彼女に少なからず同情しているのだろう。
「そうですね。
わたしもバルバラ嬢がいい影響を受けて変われる事を願っています」




