第7部隊
目の前で私を拐った男が頭を下げている。
「あの、状況がよく呑み込めてないのですが…」
「私は王妃様直属で働く近衛第7部隊所属のアランと申します」
「王妃様の…」
第7部隊というのは諜報活動や工作活動を得意とする特別部隊。
確か王妃教育でそう学んだ。
「アンジェリーナ様の報告に王妃様からオードラン家を調べるよう命が下りました。
その過程で令嬢が怪しげな仕事を請け負う者を探していましたので接触した所。アンジェリーナ様の襲撃依頼だと分かりましたので、ひと芝居打つ事にいたしました」
「そうだったのですか… ふぅー」
私は力が抜けて座り込んでしまいました。
そこへバタバタ音がして、誰かが入って来ました。
「アンジェ!」
「え? ヴォルフ様?」
いきなり入って来たのはなんとヴォルフ様でした。
なんで?
「大丈夫か? 怪我は?」
いつも冷静なヴォルフ様が何だか慌てています。
「大丈夫です。怪我もしていません。
なぜヴォルフ様がここへ?」
「アンジェの家へ行く途中で君の馬車を見かけたんだ。
でも、御者は知らない者だし後ろから怪しげな幌馬車が付いているし。
様子を見ようと、距離を取って尾行する事にしてね」
成る程、今日は一緒に晩餐をする約束だったから、ヴォルフ様も我が家に来る途中だったんだ。
「ここへ向かう途中でアランの部下が接触してきて、状況が分かったから協力する事にしたんだ。
決してアンジェが危なくなる様な事はないって約束してくれたからね」
そう言ったヴォルフ様はアラン様を見ます。
アラン様もヴォルフ様に気安い笑顔を向けています。
あれ?なんとなく知り合いみたいな…
「先程言ったように、バルバラ嬢自ら新たな罪を犯そうとしていましたから、しっかりその証拠を掴ませてもらいました。
バルバラ嬢はこのまま拘束して連れていきます。
後日、証言をお願いすることがあるかも知れませんがご協力をお願いいたします」
「わかった。アランいや、 第7隊長もしかしたら本当に拐かされていたかもしれないアンジェを助けてくれてありがとう。
先回りして手を打ってくれて良かった」
ヴォルフ様が手を差し出します。
その手をアラン様が握り返しました。
「いや、まさかヴォルフの婚約者だとは思わなかったよ。
未然に防げてよかった。
ただ、アンジェリーナ嬢に怖い思いをさせたのはすまなかった、アンジェリーナ様も申し訳ありませんでした。」
アラン様は再度謝罪してくれました。




