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怒りと狂気の間

「例え私がいなくなったとしても、ジュリアス殿下があなたを認めるとは思えないのだけれど」

私は出来るだけ平静を装い、刺激し過ぎないよう気を付けてながらもう一度説得を試みます。


「何よ、あなたなんかライアン殿下に捨てられたからって、今度はジュリアス殿下にすり寄ってくるなんて、見境ないわね。

私の邪魔しないで」

何だか凄いとばっちりな気がする。


「大体自分の婚約者を取った相手と仲良く一緒にいるなんて信じられなーい。

アンジェリーナ様って鈍感なの? あははははは」


「取られた訳ではないですし、アンヌリーブ様には何の非もありません。

嫌う必要なんてないですわ」

私は出来るだけ感情を乗せないように、淡々と答えます。


「ふん、どう言ったってあんたが負け犬には代わりないでしょ!

負け犬が私に偉そうにするなぁー

あんたなんて、もう侯爵令嬢にも戻れないんだから。

私のが上よ!私のがえらいの!」


なんだかバルバラ様の精神状態が心配になるんですが…。


どう相手をすればいいのかしら?


「学校でいくらすましていたって、皆傷物令嬢だって思っているわよ。

そんな人が偉そうにこの私に説教なんかして!

何が筆頭侯爵家よ! 同じ侯爵なんだから私の事下に見ないでよ!

私の方がすごいの!

私の方が偉いんだから!」


まるで小さな子供が駄々を捏ねているよう。

何度も同じ様な事を言っては興奮状態がエスカレートしてる。

こんな状態の相手では正論を言っても通じない。

どうすればいいの?


「何とか言いなさいよ。

私に謝れ!あやまれ!謝れ!」

もうヒステリックに声を上げ出したバルバラ様に、私はどうすることも出来ない。


もし今彼女がナイフや剣を持っていたら、いつ切り付けられてもおかしくないくらい興奮している。


狂気を感じるほどのバルバラ様を前にじわじわと恐怖が這い上がってきて、身体が勝手に震え出しました。

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