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誘拐の黒幕

押し込められた部屋は充分快適に過ごせるレベルだった。

部屋の外に見張りがいなければ、知り合いの別邸に招かれたのではないのかと錯覚してしまいそうだった。


ソファーに腰を下ろし、ため息をつく。

一体なぜこんな事が起こったのかしら?

あの男達に命令したのは誰だろう。

リーダーらしき男の言動を聞いていると彼らが主体で私を拐かしたようには感じなかった。


もう悪役令嬢じゃないのに…

いやいや、悪役令嬢なら彼らを使う側よね。


とりとめもない、いろんな考えが次々と浮かんでは消えていく。


暫くして、男が戻ってきたが1人ではなかった。


一緒にいるのは、なんとバルバラ様だった。



「バルバラ様… なぜここに?」


「ごきげんようアンジェリーナ様。

軟禁されている、気分はいかが?」


快適だって応えたら、ヒステリックに怒るかしら?


私は全く分からない悪意ではなく、自分に向けられる攻撃の主が明確になった事で妙に落ち着いてしまった。


「なぜ、こんな事をなさるの?

公になれば侯爵家は不味い立場になるわよ」


「ふん! そんなのバレなければいいのよ。

あなたを拐ったのが私だって誰にも分からないわ。

そしてあなたがこのまま行方知れずになってしまえば、誘拐自体存在しないの」

と話していますけど、なんとも幼稚な考えです。

道端に捨て去ったうちの御者もいますし、娘がいなくなって問題にしないほど、我が家は家族の関係が薄くはないのですけれど、やはり自分を基準に考えてしまっているのかしらね。


「私1人がいなくなった所で、あなたが王妃候補になる事もなければ、ジュリアス殿下があなたを好きになる事もないわよ」


「うるさい! だまれ! 全てあなたが悪いのよ。

あなたがジュリアス様の周りに現れるまでは上手くいっていたんだから!」


全く自分の置かれている立場も、周りからの評価も分かっていなかったのね。

あの状態で上手くいっていたなんて、どんな見方をすればそんな言葉が出てくるのだろう。


バルバラ様に言葉が通じる気がしなくなってきました。

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