ミレーヌ・ダンテール
サロンに移動して、専任のコックに急遽いろいろ作って貰いました。
コックや侍従たちも不測の事態に備えて、いつもある程度準備があるようで、直ぐにいろいろと用意してくれました。
ローストチキンやスモークサーモンを載せた一口オープンサンド、
キノコのキッシュ、アップルパイにパウンドケーキ。
チョコやクッキーもありますね。
「スコーンもそろそろ焼けて参りますので、お待ちください」
と侍従がお茶を入れながら言います。
今度は回りからの視線も気にせず、ゆっくり食事が出来ます。
ジュリアス殿下達、男性群が本当にもう1食分ぐらい食べて、落ち着いたところでオレリア様が話し始めました。
「昨日学校の帰りにリゼットとダンテール家へ寄ったの。
ミレーヌは病気でもなく、元気に迎えてくれたわ。
私がなぜ学校へ来ないのかと問い質すと、わざわざ面倒事に巻き込まれたくないと言うのです」
「面倒事ですか」
ジュリアス殿下が何となく分かってしまったという顔で言います。
「はい。実は謹慎中の3人とミレーヌは以前から顔見知りだそうです。それで入学式に久しぶりに会った時にずいぶんと勝手な事を言われたみたいなのです…」
まず、ミレーヌ様という人は見た目が清楚で大人しい印象を与えるようですが、実は人との付き合いが煩わしいので黙っているだけらしいのです。
幼い頃から賢い分達観されたような所のある子供だったらしく、人が2人以上いれば必ず摩擦が起こる、だから人に干渉したくないし、されたくないと言う持論を持っているのだとか。
でもそこは公爵令嬢です。
最低限の社交はこなしつつ、その他は黙って微笑んでいると言う事でやり過ごしていたらしい。
この事は同じ公爵令嬢でミレーヌ様を妹の様に可愛がっていた幼なじみのオレリア様達位しか知らないようなのです。
「考え方は冷たく聞こえますが、本当は優しい子なのです。
優しいから、ミレーヌは人と争いたくない。
人を傷つけたくないのです」
だから、最低限の人間とだけ関わって生きてきた。
後は大好きな自宅の図書館で大好きな本を読んでいればそれでいいのだと、そう思ってきたらしい。
だけど、学校へ入る歳になりそうはいかなくなってしまった。
そして入学式当日早々に事件が起こった。
ジュリアス殿下に話しかけられた。
『お互い助けになる筈だから、これから一緒に勉強を頑張っていこう』
と学友と認められてしまったのだ。
それを知ったバルバラ様達に囲まれて詰め寄られた。
昔からバルバラ様達はミレーヌ様が何も言わないのを良い事に自分達より格上のミレーヌ様に対して大きな態度を取っていたようなんです。
『ジュリアス様にお声をかけられたからっていい気になっていませんよね?ミレーヌ様なんて公爵家に生まれてなければ何も取り柄などありませんでしょ?』
『昔から、何を言っても微笑んでいるだけで、頭のネジがゆるいのではなくて?』
『ミレーヌ様は邸から出ない方がよろしいのではありませんか?』
『そうよ。別に学校など興味ありませんでしょ?家庭教師でも雇って邸にいればよろしいのよ』
と言われて自分もその気になってしまった。




