1回戦
私とアンヌリーブ様は目で合図をすると、2人で向き直りました。
私達は無言でバルバラ様達を眺めます。
侯爵家は10家ありますが、その中でもやはり格はあるのです。
実は侯爵家10家筆頭は、我が家ラフォール家と宰相のエバーソン家。
その後がクラリッサの家のバートン家と続きます。
そして、新しく侯爵に昇格したのが、セルビ様の家です。
この前までは伯爵家でしたが、トーマス様のお父様がいくつかの功績をあげられた事とトーマス様本人が次の宰相候補となられて副宰相見習いとしてお城に上がられた事で決まったそうです。
この一番新しい侯爵家を覗いたら、この3人の家は下位の3家なのですよ。
貴族のルールとしては、いくら同じ侯爵令嬢でも、私が話しかけて許しを与えなければ、喋れない筈なんですよね。
まして大声をあげて呼び止めるなんてね。
アンヌリーブ様に至っては王家扱いですから、侯爵令嬢ごときの出る幕ではないのですけど。
私はむか~しの悪役令嬢時代を思い出し、無表情でバルバラ様達を一瞥して、一段低い声を発しました。
「何事ですか?」
一瞬バルバラ様は怯みましたが、気を取り直して、一応頭を下げました。
「お呼び止めして、申し訳ありません、しかしジュリアス様とお話していたのは私達です。
いくらラフォール侯爵令嬢でも、横から来て連れて行ってしまうのは、いかがなものですの?」
おお、さすが強気ですわね。
後ろの2人も顔を見合わせなが同意するように、頷いています。
「あら? ジュリアス様今日はこちらの方々とお約束がありましたの?」
アンヌリーブ様がジュリアス様の方を見ながら聞きます。
「いえ、部屋の準備をジェームスに頼もうとしたら、彼女達が教室に入って来たのです。
姉上達が来ることは分かっていましたから、他の方と約束などしませんよ」
とジュリアス様は3人に冷たい目を向けながら言います。
私達がいる所為か強気ですね。
「お約束があったのをたがえて、私達が横槍を入れたのであれば、謝りもしましょう。
ですが、貴方がたは勝手に男子クラスに恥ずかしげもなくズカズカと入り込み、挙げ句は王族であるジュリアス様に馴れ馴れしく手を触れているご様子でしたが?
もし学校などではなく公の場なら不敬罪も問われかねないのに。
よくも私達にそのような事が言えましたね」
バルバラ様は私の指摘に顔を真っ赤にして、手が真っ白になる程強く握りしめています。
「もういいですか? 短いお昼の時間を貴方がたは私達から奪っている事を自覚なさい」
私はそう言い捨てて、踵を返しました。
さて、さてこれからどうなるかしら?
少し煽ってしまったけど、私達にも牙を向いてくるのかな?




