王妃様のお願い
「アンジェ、そろそろ私達も動き出しましょうか?」
アンヌリーブ様が私に囁きます。
私もアンヌリーブ様を見ながら頷きました。
実はこの1ヶ月の間に1年生の騒ぎのせいで、私とアンヌリーブ様は王妃様に呼ばれ頼まれ事をされたのです。
◇◇◇
「アンヌリーブ王女、アンジェリーナ呼び立ててごめんなさいね」
王妃様の応接間で私達3人が顔を合わせるのは初めてです。
私達はなぜ王妃様が2人一緒に呼んだのだろうと考えながら、お茶を頂いています。
「今年も同じクラスなのですって?」
「そうなのです。アンジェは成績優秀なので、同じクラスになるために、私もいつもより頑張りましたの」
未来の義理の親子は仲良くおしゃべりしています。
それを微笑ましく見ていると王妃様が本題に入ったようで、顔を引き締めてこちらを見て来ました。
「貴方達はもう心を許せる友達になったみたいだし、アンジェは王妃教育もしていた元王太子の婚約者。
アンヌリーブ王女も国は違えど王族として育てられてきた方だわ。
その2人だからこそ頼みたい事があるのです」
「なんでしょう?」
私は何となく見当はついている事を頭に浮かべながら聞きます。
「ジュリアスの相手の事なのです。
アンジェも知っているでしょう?
あの子にはまだ婚約者が決まっていません。
ライアンがアンヌリーブ王女と結婚してファンブールへ行く事が決まって、慌ててジュリアスのお妃候補の選定に入ったのですが…」
ここで王妃様はため息を漏らしました。
相当大変そうな事が想像できます。
「まず、あの子と同い年や1つ2つ下の令嬢が高位貴族に多い事が問題のひとつなのです。
それこそアンジェの時は少ない位だったのにね。
しかも自分の娘をなんとか候補にと躍起になっている家も多いから、大変な騒ぎなのです」
王妃様もうんざりしています。
「ジュリアスも今まで親しい令嬢はアンジェくらいでしょ?
だから、余計に決めかねてしまってね。
その上このタイミングで学校へ入る時期になってしまった。
貴方達ももう知っているでしょう? 学校での騒ぎを。
学校にお願いしてクラスは男の子ばかりにしたのに、毎日、毎日ジュリアスを追いかけてアプローチしてくる令嬢が後を立たないなんて」
「いくら各貴族へお願いを出しても足並みが揃わないのよ。
その上学校での事は、親の知らないところで起こっていると言うスタンスを取るつもりでいるのでしょう。
このままではジュリアス本人が女性不信や恐怖症にでもなりそうなのです」
私達は王妃様の言うことを想像して頷きました。




