隣だったのですね
馬車に揺られて、15分程で到着?
「え? もう着いたのですか?
めちゃめちゃ近くないですか?」
「あれ? アンジェは知らなかったのかい?
隣のアローズ公爵が王都の反対側に引っ越したのさ。父上にその相談をしていたから、この場所が売りに出る前にスターレン家を仲介したんだ」
そうだったのか…
公爵家の当主フィリップ様とお父様はお家も隣だし、仲がよかったものね。
この辺りはお城を中心とすると、西側になります。
アローズ公爵家は今度は東側にお引っ越しされたのですね。
「アローズ家なら、何度か伺った事がありますよね?
とても立派なホールがあったような…」
子供の頃、お父様に付いて遊びに来た事が何度かあった。
公爵家には夜会などで使うダンスホールがあるのだが、それが素晴らしかったのを覚えている。
「そのダンスホールの話を聞いて母上が気に入ったんだ。
父は母上が気に入れば、反対する理由がなくなるからね」
と笑いながら言うヴォルフ様。
成る程、素敵なダンスホールがあるなんてエリノア様は絶対気に入るわよね。
「アローズ家の先々代がダンス好きだったんだよ。
まだ侯爵だったころかな。
邸はそれほど大きくないのに、立派なダンスホールを建ててしまったんだって。
当時の家族は嘆いていたらしいよ」
そうなんです。先々代の時はまだ侯爵家。
うちより少し小さな土地でも、問題はなかった。
そしてそこに大きくて立派なダンスホールを作った事により、邸宅の方が少し小さくなったとしても。
まあ、小さいと言っても侯爵家の邸宅としてはですけどね。
そして、今のアローズ家の当主は公爵だ。
流石にここの邸宅では他の貴族との兼ね合いが取れないから城からも公爵家に相応しい場所への引っ越しを打診されていたのだろう。
邸の前には修繕や改修を頼んだ職人さんが待っててくれました。
「スターレン伯爵令息様、ご足労頂きましてありがとうございます」
「ああご苦労、今日は中を見させてもらうよ」
「はい。もう作業は全て完了しておりますので、何か不備がございましたらおっしゃって下さい」
私達は玄関を開けて中へ入りました。
少し年代物の建物だけど、やっぱり素敵なんですよね。
作りはしっかりしているし、前世で言うところのロココ調的な雰囲気。
公爵家のどなたかが、とてもセンスがよかったのでしょうね。
「やっぱりこのお邸素敵ですよね」
「そうだな。出来るだけそのままで補修を中心にしたんだ。
壁紙なんかは張り替えたけど、出来るだけ同じような物にしてもらったが、アンジェがもし気に入らない事があったら言ってくれ。
君も住む事になるのだから」
「はい」
なんだか、新婚の新居の見学みたいだわ
少し照れてしまいます。




