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誤解? 勘違い?

「落ち着いて、ヴォルフ兄。

まず、ニーナを覚えている?」


「ニーナ? タルボット伯爵家のニーナか? もちろん覚えているけど、それがどうかしたのか?」

なぜ、それを今聞かれているか分からないと言う様子のヴォルフ様。


「こっちに戻って来てから、会ったかい?」


「ニーナと? いいや。

最後に会ったのはまだ私が学校へ行っている頃じゃないか?」


「本当に? 神に誓える?

ニーナとは数年以上会っていないんだな?」


「何をおおげさな… 誓ってもいいさ。大体顔も思い出せないくらいだぞ」


私とマリウス様は顔を見合せて溜め息を吐き出しました。

やはり緊張していたみたいです。


「なんだ? どうしたんだ?2人とも。

ちゃんと分かるように説明してくれ」

1人事情の分からないヴォルフ様だけが、戸惑っています。


「実はヴォルフ兄の、留守中にニーナがアンジェリーナ嬢を訪ねてきたんだ」


ヴォルフ様が確認するように私を見られたので、私も補足します。


「エリノア様とドレスを作りに行ったら、偶然会って紹介されました」


「ニーナは婚約を解消するように、アンジェリーナ嬢に頼みに来たんだ。

私のお慕いするあの人を返せって言いながらね」


「それでニーナの事を聞いたのか…

全く… 何事かと思った」


「ずいぶんと、反応が薄いね」


「当たり前だろ、そんな妄想みたいな事を言われても、そもそも顔も思い出せない相手だぞ?」

あきれながらヴォルフ様は言います。嘘を言っているようにはみえません。



「では、ニーナ様は片思いで暴走したと言う事でしょうか?」


「それもないだろう… 私はニーナとはそれ程親しくない。

それを言ったらマリウスの方が仲良くなかったか?」



そう言われたマリウス様の顔は苦笑いと言うか少し寂しそう。

「まあね、少なくともヴォルフ兄よりは好意を持たれていると思っていたよ。

正直、アンジェリーナ嬢から話を聞いた時は複雑な気分だった」


あれ? マリウス様も幼なじみとしてではなくニーナ様を女性として、少なからず好意をもっていたのかしら?


先程までは頼りになるマリウス様だったのに、ヴォルフ様の前では本音が出ると言うか、素顔でいると言うかちょっと甘えた感じまで見て取れます。


そんなマリウス様を見ていた私はニーナ様とマリウス様のやり取りに感じたモヤモヤに思い当たりました。

もしかしたら、勘違いや思い違いが今の状況を生んでいる?



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