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冷静でいるのは難しい

いろんな考えがぐるぐるして、無言のまま固まっていた私はエマに肩を掴まれて揺すられました。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


「… エマ?」


「どうしたんですか? あのご令嬢はいきなり帰ってしまわれましたが…

お嬢様は微動だにせず固まっていらっしゃったし…」


「え? ニーナ様帰られたの?」


「それも気が付いてなかったんですか?」

エマが呆れながらも、心配そうに見ています。


「ごめんなさいエマ。

ちょっとびっくりして… 意識が遠くに行ってた」


「何があったんですか?」


「ごめんなさい、今は言えない」

そう、下手な事を言ってはいけない

まだ真実は分からないもの。

取りあえず、ヴォルフ様の帰りを待とう。


私は気を取り直して本を開きましたが、内容は入ってきませんでした。


代わりに嫌な妄想ばかりが広がります。

でも、エリノア様は女の影もなかったって言ってたし…。

でも、2人が秘密の付き合いだったら…。

いやいや、隠す必要はないわよね。

でも、何か事情があって…。



否定と肯定の考えが交互に襲ってきます。

まるでアニメの天使と悪魔。


はたから見たら、ただ本を読んでいるだけに見えているだろうが、当の本人は感情の起伏の激しさでクタクタになっていました。


「エマ、疲れたから少し部屋で休むわ」

私はボソッっと呟いて、部屋に籠りました。


久しぶりにアンジェリーナとおばさんに戻った私の夢を見た。

お互い不安をぶつけ合い、ヴォルフ様が帰ってきたら、文句を言おうと団結する。

最後は、2人で大丈夫だと、なぐさめあい抱き合って泣き笑いしました。


目が覚めた時は、どこかスッキリとしていました。


エマが気遣うように部屋に入って来ました。

昨日は夕食も食べずに引きこもってしまったから、心配させてしまった。


きっと帰ってきたお母様たちも心配させてしまったかな。


食堂へ入って行くと、案の定エリノア様とお母様が飛んで来ました。


私は2人に心配を掛けたことを謝り、前の日に夜中まで読書をしてしまい寝不足で体調が悪くなったと言い訳しました。


少し怪しまれましたが、そう言いきると一応は納得してくれましたが、昨日ニーナ様が突然訪問している事は執事長から聞いているだろう。


そこもフォローしておいた方がいいかしら?


「そう言えば、昨日ニーナ様が突然来られたんですよ」


「ええ、執事長に聞いたわ、いつもはちゃんとしている子なのよ。

どうしたのかしら?」


普段はちゃんとこちらの予定を、聞いてから遊びに来ているそうだが昨日に限ってはそうでなかったのね。

それだけ、切羽詰まった状態だったのかしら?


また嫌な妄想をしてしまいそうだわ。

いけない、いけない。


エリノア様が言うには、お隣同士だし、交流は家族ぐるみであるみたい。


「ヴォルフ様達とは幼なじみなのですか?」


「そうね、よく3人と遊んでいたわね」


それがお年頃になり、いつしか恋心に変わったって言うことなのかしら。


やっぱり考えはそっちにいってしまう。

私は2人の前で普段通りに振る舞うので精一杯だった。


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