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伯爵令嬢

今日はエリノア様とお母様とドレスを作りに行く事になりました。


この数日はソバに掛かりっきりでしたので、今日は両母親孝行をいたします。


行き先はエリノア様の出資している商会です。


ここの服飾デザイナーや職人はエリノア様が王都にいる頃からのご贔屓だった人達を引き抜いて連れてきたのだそう。


王都から遥か遠い辺境で質のいいドレスが手に入るから、スターレン領のみならず近隣の領からもお客様が来るらしい。


「いらっしゃいませ奥様。お待ちしておりました」

年配の物腰の柔らかい男性が扉を開けて迎えてくれます。


「バートン 未来のお嫁さんとそのお母様をお連れしたわ」

お店の支配人をしているバートンさんに紹介してもらいました。


私達はエリノア様専用の応接室へ通されます。


「今日はねアンジェのダンス用のドレスと、夜会用のドレスを作りたいのよ」


エリノア様からアンジェと愛称呼びをしてくれる事になったのは、今日の朝からでした。

食事の後に「私もアンジェと呼びたいわ」と言ってもらえたのです。

ちょっと照れるけど、うれしいです。


デザイナーのリンダさんが入ってきて挨拶が終わった後、エリノア様とお母様、リンダさんで私のドレスの話ですごい盛り上っています。


何となく、自分のドレスなのに私が置いてきぼりになっている気がします。


2時間後、何とかドレスも決まりリンダさんにお礼を言って部屋を後にします。


お店の広いホールに戻るとエリノア様に声をかけてきた少女がいます。


年は私と同じくらいでしょうか… とても華奢で可愛らしい感じの令嬢です。


「おばさま、ごきげんよう。

今日はドレスを作りに参りましたの」


「あら? ニーナ様ごきげんよう。

わざわざスターレン領まで来てくれたの?

ちょうどいいわ、あなたに紹介するわね。

ラフォール侯爵夫人のカミラ様と令嬢のアンジェリーナ様です。

カミラ様、アンジェ、お隣のタルボット伯爵家のニーナ様ですわ」


タルボット伯爵領は辺境伯爵領のお隣の領地で、スターレン領の町もご贔屓にしてくれているそうです。


「ニーナ様、アンジェは数年後にはうちにお嫁に来る事になっているから、仲良くしてね」


「え? それでは次期当主様とご結婚されるのですか?」


「そうなの。 全然女の影がなかったから案じていたけど、この度ご縁があって、本当によかったわ」

とエリノア様がいいます。


「ほんとにねぇ~ いいご縁でしたわね」とお母様も同意している。



「そう…ですか…

お、おめでとうございます。

では、私は馬車を待たせておりますので…」


ニーナ様はなんだか、顔色を悪くして逃げるように出ていきました。


何でしょう?

急にどうしたのかしら?


まさか、次期当主夫人の座を狙っていたとか?


エリノア様とお母様は自分たちの話で盛り上って、あまり気が付いていないようですが… 少し気になります。



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