お役御免
皆、無言で食べ始めました。
なぜ無言かと言うと、一生懸命パスタを巻いているから。
パスタを巻くって、やった事ないと難しいのね。
そんな事考えた事なかったな~
前世で、だけど。
頭で覚えているだけでも、ちゃんと出来たから、皆も直ぐに上手く巻けるようになるでしょう。
「この細長いのが、ソバって言う物か?」
ランドルフ様がまじまじと見ながら言います。
「はい、昨日は小麦粉の代わりにした生地をフライパンで焼きました。
今日は小麦粉と一緒に水、卵と混ぜて茹でてあります」
本当の蕎麦に卵はあまり使わないけど、どちらかと言うとパスタをイメージしてたから卵を入れました。
繋ぎにもなり、まとめやすいとも考えてみたんだよね。
「へぇ~ すげぇ~ おれはトマトソースのが好みだなぁ~」
と言ってモリモリ食べてます。
「昨日と同じ食材を使っているなんて、思いもしないわ。
このもちもちした感じがいいわね」
とエリノア様も言います。
「エリノア様、お母様、巻くときにトマトソースがとんだりするので、お気をつけください」
そう、トマトソースはとぶのよね。
2人の高価なドレスにとんだら、侍女が泣きますよ。
でも、さすが女性お2人のが慣れるのが早いわ。
とても上手く巻いて食べていらっしゃる。
「昨日のも旨かったが、この細長いのも上手い。この様にいろんなバリエーションが出来るとは、予想以上に期待出来そうだ」
とおじさまも満足そうです。
「父上、先程も言いましたがソバとは荒れ地でも育つようです。
我が領の荒れ地地帯を耕しソバ畑にすれば、小麦の十倍の収穫が見込めますよ」
マリウス様が説明します。
「これは思った以上の改革になりそうだ」
おじさまもマリウス様もすぐにでも取り掛かりそうですね。
「そろそろアンジェリーナ様はお役御免にしてくださいね。
私達の可愛い娘との時間が減ってしまって寂しいですもの」
とエリノア様に釘を刺された男性軍は否とは言えません。
私もこれ以上はお役に立てる事もないと思うので、後は料理長にお任せします。




