ソバの実
邸に戻った後、まずはスターレン家の料理長に蕎麦の事を聞きに行きます。
「料理長 仕事中すまんがちょっと話を聞きたいんだ」
「ヴォルフ様どうされました?」
とても体格のいい料理長がにこやかに調理場から出てきました。
私達は採ってきたソバを見せて聞きます。
「この植物の実を食べたり、調理したことはあるか?」
「ん? これはソバですか?
この季節は花が綺麗ですな
しかし、わしはソバの実は食べたことはありませんな~」
「この辺の領民も食べたりはしない?」
「ええ、聞いた事はありませんな」
食べれる植物って認識がないんだ…
だとすると、蕎麦の収穫期も知らないかも。
となると、蕎麦の実自体直ぐに手に入らないよね?
今はまだ花の時期だし… 。
実がなる頃には私は王都に戻っている。
どうやって食物となりうる植物だと分かってもらえばいいかしら?
「どうした? アンジェ大丈夫かい?」
私が考え込んでいたから心配されてしまった。
「ごめんなさい 考え込んでしまって。
この領内の人がソバを食していないとなると、ソバの実が手にはいらないと思って」
「アンジェリーナ様はソバの実が欲しいのですか?」
後ろから侍女に声をかけられた。
「すいません、いきなり。
ソバと言う言葉が耳に入ったものですから」
そう言った彼女はカーラと言い、私の部屋にも何度も来てくれている侍女だ。
「カーラはソバの事に詳しいの?」
「私の家は領地の端の方に位置する村の村長をしているのですが…」
カーラが言うにはカーラの村は特にソバが群生していて、ソバの実は何かに使えないかと採ってあるらしい
「今のところ周りの殻が固いので枕やクッションの中に入れてみたりしています。
綿花は高いですから」
前世でも、もみ殻枕みたいなのあったわね。
「ねぇ、カーラ、使用していないソバの実は保存していないかしら?」
「多分あるとおもいますよ。この辺は秋に実がなるけど、うちの方は春先に花が咲いて実がなるのは先月ぐらいてすよ」
そうか!
ソバは春と秋に収穫期を迎える種類があるって聞いた事があった。
蕎麦を思い出したら、次々に甦る記憶。
私が蕎麦に詳しいのは、前世のおばあちゃんが蕎麦が有名な地方に住んでいたから。
前世で私は祖母に色んな事を習った
「お願い、カーラ。
ソバの実を分けてもらいたいの」
「いいですよ。ヴォルフ様、私実家まで行ってきていいですか?」
「ああ、よろしく頼むよ。
新しい物をあるだけ分けてもらってくれ。 ちゃんと執事長に買い取る為の金をもらっていきなさい」
「え? 買い取ってもらえるんですか?」
「村の物だ 只で搾取する訳にはいかない。
村長によろしく言ってくれ」
「はい。 ありがとうございます」
「カーラ よろしくね」
私達はカーラを見送り、料理長に改めてソバの実が届いたら、一緒に料理の開発をしてくれるように頼んだ。
ヴォルフ様から、領地内で収穫できる作物を増やす為にソバを考えていると、聞いた料理長は二つ返事で協力を、約束してくれた。
何にせよ、先ずは現物を見てからだわ。
楽しみです。




