思い出しました
「そうだ、この近くにもう1つ綺麗な場所があるんだ。行ってみよう」
ヴォルフ様に手を取られ道を戻ります。
湖から少し離れた所に馬車は止めてあります。
森の中だけど、しっかり整えられた道までは、馬車で来ました。
そこまで戻り、御者に声をかけて違う道に向かいます。
少しだけ登り坂になっている道を2人で手を繋ぎ歩いて行く。
森の中の湖に行くと聞いたエマが歩きやすいように足首より短い丈のワンピースとブーツを選んでくれた。
ブーツのお陰で少しくらいの道の悪さは歩くのに問題なかった。
「さあ 着いたよ」
そこは丘のように少し小高くなった開けた場所だった。
そこを埋め尽くす程の白いものが…
「まあ」
これは… 白い小さな花が丘一面を覆っている。
なんだろう… 見たことあるような花なんだけど…
「これはソバと言う植物の花なんだ。
ちょうどこの時期に花が咲いて綺麗なんだよ」
「蕎麦! そうよ、それだ!
思い出した! 蕎麦だわ」
道理で見た事あると思った。
そして今朝のモヤモヤもスッキリ解決した。
「アンジェ? どうした?」
いきなり興奮気味に声を上げた私を不思議そうに見ているヴォルフ様に、今朝のマリウス様のやり取りと蕎麦の話をします。
蕎麦は荒れ地や寒冷地にも育つ作物なのです。
「確かにソバは領地のあちこちで見る植物だが、ソバの実が食べられるのか?
と言うか… そもそも実をあまり気にして見たことがなかったな」
と言うことはこの世界の人は蕎麦を食べた事がないのかしら?
貴族の人達だけが知らないとか?
ここは調べた方がいいかな。
取りあえず帰ってマリウス様にも相談してみよう。
あー でも思い出せてよかった。
すごくスッキリした。
それに私の前世の記憶が、お嫁に来るこの領の為に何か力になれるかもしれない。




