ダンス
食後の楽しいお喋りは続いていたが、何かのキッカケでランドルフ様と目があった。
「そう言えば、母上がアンジェリーナ嬢のダンスが素晴らしかったってずっと言ってたな。
ヴォルフ、アンジェリーナ嬢、一つ踊ってみてくれないか?」
とランドルフ様がヴォルフ様の肩を抱きながらいいました。
エリノア様は両手を握ってこっちを見ています。
そんなに瞳をキラキラさせて見られたら、断れそうにありませんね。
「アンジェ どうする?」
ヴォルフ様が私に聞きます。
「私などの踊りで良ければ構いませんわ」
ヴォルフ様に頷きます。
ヴォルフ様が立ち上がり私の手をとりました。
宴会場の中央辺りの広い場所に歩いていきました。
「きっと母上は最初からアンジェを踊らせるつもりで、晩餐会場をこの場所にしたんだよ」ヴォルフ様が耳元で囁きながら笑ってます。
「アンジェ 何を踊る?」
「そうですね… 」
私は年越しパーティーで踊った曲をリクエストした。
王妃さまにアンコール頂いた曲だ。
そんなにエリノア様に楽しみにされていたなら、ちょっと難易度が高い曲を踊ろう。
ヴォルフ様は頷いて、休憩していた楽団のところへ曲を頼みに歩いていく。
その間に皆が椅子をこちらに向けて座っていた。
ヴォルフ様が戻って来て、優しくホールドしてくれる。
音楽が始まり、私達は踊り出す。
今日のドレスはシンプルな物にしたからとても踊りやすい。
婚約披露パーティーでは、自分でデザインにこだわったドレスだったから、ダンスの事はそこまで重視して作らなかった。
だからってダンスが上手く踊れなかった訳ではないし、そこまで気にはしてなかったけど…
卒業パーティーでエリノア様に頂いたドレスはダンスの事を考えた素晴らしい物だったけど、やはり、デザイン的には少し気をつけて踊っていた気がする。
だって凄く素敵で高価なドレスだったもの!
それに比べると、今日のドレスはいつもダンスの練習をする時に着ている練習着のドレスに1番近いから全力でいける気がする。
そんな私に気が付いたのか、ヴォルフ様がふっと笑って手に力を込めた。
ヴォルフ様とは公の場所でも、練習でも数えきれない程何度も踊って、ダンスで会話をしているようにお互いの気持ちが伝わる。
多分もう誰よりも気持ちよく踊れるし、上手くリードしてくれる。
この手がなんと言うかしっくり馴染んでいることに、安心感と幸福感を噛み締めて踊った。




