お慕いしています!
「おっはよ〜!ハナ!!」
そう言って俺に抱きついてきた彼女は、金村茉莉。
俺の幼馴染だ。
「昨日、なんか用事あったの?」
そう聞いてきた茉莉の質問に答えず、俺の意識は全く別の方向に向いていた。
あの女、なんだったんだ。
あの後、あの少女は運命だのやっと出逢えただのよく分からんことをベラベラと語っていたが。
彼女は自分のことをキキョウと名乗った。
制服を着ていたが、おそらくこの学校の生徒ではないだろう。
運命ってなんなんだよ。
そもそも、俺はあいつなんて知らないし。
「ねぇ!聞いてんの?」
なかなか答えない俺に、ついに耐えきれなくなったのか茉莉は机をバンと叩き俺に問いかける。
「あぁ、悪い。
なんの話ししてたんだっけ?」
「だーから昨日の帰り何かあったの?」
イラついた様子で茉莉はもう一度俺に質問する。
「ちょっと探し物してただけ。」
「それならいいんだけどさ。」
なんだか、納得の行かない様子の茉莉。
こいつ、変に勘が鋭いからな。
「そういえば、」
「花見様ァァ!!!」
茉莉が口を開いたと同時に、俺に向かって猛スピードで走ってくる奴がいた。
「お待たせいたしました!」
そいつはそう言うと、ビニール袋に入ったパンを俺に差し出してくる。
この声のでかいやつは木山みもざ。
まぁ、こいつも俺の幼馴染みたいなものだ。
正確にはおれの昔の世話係。
でも、もうそれは昔のことで今はただの友達だ。
「だから、もうそういうのいいってば。」
俺はみもざにパンを返す。
「いえ!ボクは花見様をお慕いしています!
だから、これはボクの意思なので遠慮なさらず!!」
昔から、話の聞かないところは変わっていない。
「ちょっとみーちゃん!
今、私とハナが話してたんだけど!」
話を遮られた茉莉は不満そうに、口を開く。
「あ、すみません。
いたのですね金村様。」
みもざは全く悪いと思っていないような口調と表情で茉莉に一応形だけでも謝る。
「あんたねぇ!」
「気安く話しかけないで頂いてもいいですか。」
小さい頃から一緒なのに、この2人は一向に仲良くならない。
いや、むしろ仲がいいのか。
「それで、なんだよ茉莉。」
俺は茉莉の話が気になったので聞いてみる。
「あ、うん。
今日うちのクラスに転校生がくるんだって!!」
「へぇー、転校生か。男?女?」
「女の子!しかも2人来るみたい。」
そう茉莉が言ったとき先生が教室に入ってきた。
俺は慌てて席に着く。
「なぁ、転校生来るらしいぜ」
「あぁ、なんかそうらしいな。」
「けっ、クールボーイは興味なしかよ。
美人な子だといいなー!」
後ろから話しかけてくるこの男は、杉原菜花。
女みたいなこの名前が、コンプレックスな男だ。
さらに杉原はかなりの女好き。
転校生が気になってしょうがないのだろう。
「えー、皆さんこのクラスに転校生が来ます。
暖かく出迎えてくださいね!」
先生がそう言うと、ドアが空いて2人の少女が入ってきた。
「な……っ!!」
俺は驚きで、しばらく目が離せなかった。
その転校生は、昨日キキョウと名乗った謎の少女だった。
「大吉キキョウです。
よろしくお願い致しますね!」
少女は微笑んでそう言った。




