おい、また強くなれそうな予感だぞ
決着はついた。
逃げるように撤退する王国軍を尻目に、初代国王オルガントはふうと息をつく。
「やれやれ。これで一件落着といったところかな」
「こ、国王様……!」
「本当に初代の国王様だ……!」
どよめきをあげ、一斉に膝をつく村人たち。
そんな彼らに、オルガントは「はは」と苦笑を浮かべる。
「かしこまらずとも結構。先ほどはあえてあのような態度を取ったが、余はすでに引退した身。フランクに接するがよい」
「フ、フランクにって……」
「とっても難しいんですが……」
うんうん、わかるよその気持ち。
僕なんかさっき、いきなり親友認定されたしね。
「ふふ、そう恐縮することはない」
初代剣聖ファルアス・マクバも愉快そうに笑い声をあげる。
「陛下の功績はおそらく現世にまで語り継がれているだろうが、その実、ただのエロジジイだからな。ただ口がうまいだけよ」
「ふーん。そういうこと言う。そういうファルアスこそ、三十まで童貞だったじゃろうが」
「なんだとやるかこの国王」
「おうおう望むところじゃ剣聖」
「は、ははは……」
思わず乾いた笑みを浮かべる僕。
なんだか急に力が抜けてしまったな。
二人とも、思った以上に接しやすいというか……。少なくとも、一緒にいて居心地が悪いということはない。
「あ、あの、私たちまったく理解が追いついてないんですが……」
完全に置いてけぼりを喰らったレイが、目を白黒させながら偉人たちに問いかける。
「お二人とも、そもそもなんでここにいるんですか……? 幻じゃないですよね?」
「うむ? なにを言う我が子孫よ」
オルガントはそう言いながら、ワッハッハと僕に肩をまわした。
「ファルアスの子孫――アリオス・マクバの能力のおかげよ。それ以外に理由があるかな」
「ア、アリオスの……?」
「うむ。アリオスの《チートコード操作》は女神の力を譲渡したもの。それによって一時的に、思念体として蘇ったわけだ」
え、そうだったのかこれ。
女神の力の一部って……《剣聖》スキルどころじゃない気がするんだがそれは。
おおおお……! と
どよめきが一斉に広がった。
「アリオスの力はやはり神レベルだった……!」
「どうりで強いわけだ……!」
「でも、アリオスさんなら納得ですね!」
おい、そこで納得するな。
「んー、こほん!」
僕はわざと大きな咳払いをかますと、偉人たちに問いかける。
「えーっと、ファルアスさん。一時的に脅威は退けましたが……これで終わりじゃないんですよね?」
「おう。そうだな」
ファルアスは腕を組んだまま続ける。
「猶予は一週間。それまでにアルセウス救済党を叩きのめす必要があるが……事はそう単純じゃあるまい」
「ええ……そうですね」
アルセウス救済党の本拠地は王城。
そして少なくとも、レイファー第一王子や第19師団が敵についている。
ともなれば、より繊細な立ち回りが重要になる。下手をこけばレイファーに足を掬われかねないからな。
「……ま、それについては問題ない」
オルガントはにやりと笑うと、第二王女レイミラに目を向ける。
「我が子孫よ。あとで大事な話がある。レイファーでさえ知らぬ抜け道をそなたに教えよう」
「え、私にですか……?」
「うむ。次期国王にふさわしいのはレイファーではない。余は、そなたに国王の座についてもらいたいと考えておる」
「えっ……!?」
大きく目を見開くレイミラ。
さすがに驚いているようだな。
「まあ、すぐに決断できることではあるまい。ゆっくりでいい。自分で決めなさい」
「は、はい……! ありがとうございます」
一方で、初代剣聖ファルアスも僕を見て告げる。
「アリオス。おまえには我が淵源流の後継者として、稽古をつけさせてもらいたい。よろしく頼めるか」
「…………!」
初代剣聖による剣の指導。
またとない機会に、僕の身体は思わず震えた。
「こちらこそ……お願いします!」
「うむ。真の剣聖たりえるのはおまえだけだ。この時代は……おまえに託すぞ」
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
詳細はまたご報告しますが、今後とも面白い作品を届けたいと思いますので、ぜひブックマークや評価で応援していただければと思います。
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