おい、かなり便利な能力だぞ
「えええいやぁ!」
レイの放った聖魔法が、僕に飛んでくる。
「遅い」
「やぁぁぁああ!」
「軌道が丸見えだ。焦らなくていいから、ひとつひとつ着実に放ってくれ」
朝食後。
僕は村はずれの広場にて、レイと訓練を繰り広げていた。
今更だが、彼女の冒険者としてのランクはD。僕と同ランクということになる。
聖魔法は攻撃・回復・補助、すべてを使いこなせるオールラウンダー的な属性だ。だからこそスキルとしては重宝される。いわゆる《当たりスキル》だな。
だが、彼女の戦闘経験は多くない。
王族だから致し方ないことではあるが、当たりスキルを使いこなせていないのが現状だ。
今後のことを考えると、彼女も強くなっておくにこしたことはない。
だからレイのほうから申し出があったのだ。私を鍛えてください――と。
「うぅ……アリオスぅ、強すぎるよ……」
「まあ仕方ないさ。こればっかりはね」
へなへなとへたり込むレイに、僕は手を差し伸べる。
まあ、僕だって《チートコード操作》で棚ぼた的に火属性の魔法が使えるだけ。偉そうなことを言える立場じゃない。
「でも……なんだろ。アリオスと戦ってると、なんだか少しずつ力が湧いてくる気がするんだけど……」
「はは……そうか」
彼女の感覚は間違っていない。
―――――――
使用可能なチートコード一覧
・攻撃力アップ(小)
・火属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)
・吸収
・無敵時間(極小)
・古代兵器召喚(一)
★対象の経験値蓄積の倍加
――――――
対象の経験値蓄積の倍加――
先日、アルセウス救済党の構成員を倒したことで入手した能力だ。
思った通り、成長のスピードを速める効果があるみたいだな。
レイはいま、僕に魔法を放つだけで刻一刻と実力を高めている。
そしてこの能力のポイントは、使用者自身も対象になりうること。
だから実は、強くなっているのはレイだけじゃない。僕もだ。
「レイちゃーん!」
「頑張ってー!!」
「アリオスさんも頑張りやー!」
いつの間にか村人たちが集まってきていたようだな。
僕たちの訓練を楽しそうに眺めている。
そして。
「アリオスさん……そろそろいきますよ」
「……本当にくるんですね」
脇では、Aランク冒険者のカヤ・ルーティスが剣を構えている。
彼女もかねてから《稽古してほしい》と言っていたので、しれっと参加してきた形だ。
……とはいえ、彼女はAランクの冒険者。
レイとも戦っている最中、さすがに対処しきれないはずだが、カヤは「アリオスさんなら大丈夫」だと言う。よくわからないが、手加減してくれるのだと思う。
まあ、僕としてはありがたいんだけどね。
そのぶん、僕自身も強くなるわけだし。
「せいあああっ!」
気合いの声とともに突進してくるカヤの剣を、僕はとりあえず受け止める。
さすがはAランク冒険者。
重い一撃だ。
「ていっ! やぁ!」
その後も剣撃を繰り出してくるが、僕はそのすべてに対応できた。
やはり手を抜いてくれてるんだろうな。
そこまで脅威的な攻撃はしてこない。
「うりゃああああああ!」
その脇でレイが聖魔法を放ってくるが、こちらは同威力の火属性魔法で相殺する。レイは攻撃の軌道がわかりやすいからまだ楽だ。
そうして訓練を続けること、約一時間。
「な……なんで一撃も当てらんないのよ……」
「アリオスさん強すぎです……」
地面にへたり込むレイとカヤだった。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
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