おい、親子ともどもその悲鳴かよ
「ふぅ……」
僕は息を吸い込むと、改めてヴァニタスロアと対峙する。
相手の強さは未知数。
それでも負けるわけにはいかない。
絶対に。
見れば、ほとんどの観客が避難を開始していた。
みんな僕を応援してくれていた。
絶対に負けるな、頑張れ――と。
この期待を、裏切るわけにはいかないよな。
一方で、ヴァニタスロアから逃げずに僕との協力を申し出る者もいた。
「アリオスさん!」
「私たちも加勢します!」
Aランク冒険者のカヤ。
Bランク冒険者のユウヤ。
Cランク冒険者で、かつて僕に暴言を飛ばしてきたおっさん。
そして――レイミラ・リィ・アルセウス。
「みんな……」
目を見開いている僕の両手を、レイはしっかり握りしめた。
「アリオスだけに危険な役目を負わせられないって! ここは私たちも協力するから、みんなで勝とう!」
「レイ……」
その手の温もりに、僕は何度癒されてきただろう。
「そうですよ! 私だって、助けられっぱなしは嫌です!」
カヤも苦笑しながら剣を構える。
ジャイアントオーク戦で剣を失ったはずだが、新しい剣はすでに調達してあるようだ。
「私だって精一杯のことはやらせてもらうよ。アリオス君にばかり重責は背負わせられない」
そう言うのはBランク冒険者のユウヤ。彼もわざわざこの決闘に応援しにきてくれたようだ。
「アリオス様の危機は私めの危機でもあります! アリオス様が死ぬとき、私も死ぬのです!!」
相変わらず意味不明なことを言っているのは、例のおっさん冒険者。今更だが、名前をラッセンというらしい。
「みんな……ありがとう」
ヴァニタスロアは危険な相手だが、攻撃力を半分の半分にしている以上、きっと問題ないはずだ。
それに。
僕はそっと《チートコード操作》を起動すると、《対象の攻撃力の書き換え(小)》を選択する。
この能力は、任意の相手の攻撃力を下げることができるが――それだけじゃない。
強化することもできるんだ。
レイ、カヤ、ユウヤ、ラッセンの攻撃力を、僕はそれぞれ4倍に高めた。
「わわっ……?」
「力が……?」
「なんだこれ……っ」
それぞれに戸惑いの表情を浮かべる仲間たちに、僕は真顔で言う。
「みんなの攻撃力を4倍にあげた。これならきっと勝てるはずだ」
「よ、4倍って……アリオスさんは高位の魔術師だったかしら」
カヤが呆れの声を発する。
「素晴らしい! さすがは私めのアリオス様です!!」
「君は……本当に常軌を逸しているね」
ラッセンとユウヤもそれぞれの感想を口にした。
「うふふ……これがアリオスだから。外れスキル所持者なんかじゃない……本当の剣聖」
レイも天使の微笑みを浮かべて言う。
……なんだかもの凄く持ち上げられた気がするが、いまはそれどころじゃない。
未知なる魔物、ヴァニタスロア。
いまは奴との戦いに集中しなくては。
「いくぞみんな! 絶対に――あの化け物を倒そう!!」
「「おおーっ!」」
僕のかけ声に、仲間たちが元気よく応じた。
★
一方その頃。
剣聖リオン・マクバは憔悴を隠しきれずにいた。
突如現れた、謎のデカブツ。
実際に戦ったことのある魔物ではないが、剣聖として、なんとなく直感してしまった。
あいつは強い。
強すぎると。
だから戦闘には二の足を踏んでいたのだが――なんと、アリオスを筆頭に、冒険者たちが善戦を繰り広げていたのだ。
驚くべきことに、全員の攻撃がデカブツに大ダメージを与えているようで。
誰かが攻撃するたびに、デカブツは巨大な悲鳴をあげていた。
存外にも、防御力の低い魔物なのかもしれない。
であれば、自分自身の攻撃ならばもっとダメージを与えられるかもしれないと――リオンは考えはじめていた。
ダドリーが負けたことで、マクバ家の評判は完全に落ちてしまったから。ここですこしでも挽回しておく必要がある。
「うおおおおおおおっ!」
だからリオンは、あのデカブツに向けて斬りかかってみせた。
のだが。
「ギィ……?」
「あれ?」
効いてない。
まったく効いてない。
なぜ?
動揺するリオンに、デカブツが容赦することはなかった。
「シャアアアアアアッ!!」
漆黒の炎をまとった右腕が、リオンに向けて振り払われる。
「ウボァーーーーー!」
リオンは呆気なく吹き飛んでいった。
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