おい、まだ僕は本気じゃないぞ
★
「う……う……」
突如にして、ダドリーが呻き声を発し始めた。
「うおおおおおおおおおっ!!」
そのまま両腕を大きく広げるや、すさまじい叫び声を響かせる。彼の周囲をまとっていた白銀のオーラが、より一層の大きさと密度を帯びる。
「……ぬ」
僕は目を細め、警戒心を強める。
――ダドリーの奴、やっと本気を出す気になったか。
さっきまでとは風格が段違いだ。やはり手を抜いていたようだな。
「……ふふ、そうじゃなくては面白くない」
僕の呟きに、ダドリーが
「なんだと?」
と眉をひくつかせる。
「僕だってまだ本気を出してないからね。こんなに呆気なく終わっては締まらないだろう」
「あれで……本気じゃない……?」
なぜかダドリーは一瞬だけ絶望したように俯いたが、数秒後、乾いた笑みを浮かべる。
「へへへ……。冗談も大概にしやがれ。この上なにをするつもりってんだ」
「まあ――戦っていくうちにわかるさ」
「けっ。いちいち勘に触る野郎だな……」
ダドリーは顔をしかめるや、再び戦闘の構えを取る。
そして。
ダッッッ!!
咄嗟に地を蹴り、僕に向けて突進してきた。
空気を切り裂くその速度は、さきほどとはまるで別人。
「おおおおっ……!」
観客たちも歓声をあげる。
喜ぶべきか悲しむべきか、僕にも剣士としての血が流れているようだ。ダドリーのスピードに、すこしだけワクワクしている自分がいる。
――面白い。
やはりこうでなくては!
視界に剣が迫る。
キィン! と。
僕は難なく受け流す。
隙ができたところに殴打を敢行。
「ごげっ!!」
ダドリーが唾を吐き散らしながら吹き飛ぶ。
だがそれだけでは終わらない。
咄嗟に受け身を取り、再び襲いかかってくる。僕はそんなダドリーの剣を、難なく受け止めていく。
「は、速い……!」
「さすがはダドリー様……!」
「で、でもよ……なんでアリオスはあのスピードについていけてんだ……?」
「しかも余裕そうだぞ?」
観客たちのそんなどよめきさえ、僕の意識には入らない。
まだだ。
もっと上を目指せる。
剣聖の、その先へ――!
僕は大きく後退すると、スキル《チートコード操作》を発動する。
――――――
使用可能なチートコード一覧
・攻撃力アップ(小)
・火属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)
・吸収
――――――
選ぶ能力は《火属性魔法の全使用》。
いま効果的な選択はこれだろう。
「ふぅ……」
僕は片腕を突き出すと、手の平に魔力を集中させる。魔法の特訓をしてこなかった僕だが、その使い方はなんとなく肌にわかった。
「ん……? おい、まさかおまえ――」
ダドリーが目を見開くが、この隙を逃すわけにはいかない。
――中級魔法、フレアゾーン。
途端、大の男ほどもある火球がダドリーの周囲にいくつも発生する。
「はっ? はっ? 魔法? 嘘だろ!?」
ダドリーは困惑がおさまらぬ様子。
まあ、そりゃ驚くよな。
リオンからも、僕が魔法を使えるなんて聞いてないだろうし。
「お、俺……夢でも見てるのか……? あれは魔法――しかも中級魔法じゃ……」
「剣も魔法もあそこまで使える奴なんて、王都にいるのか……?」
「ダドリー様もさすがに魔法なんて使えないよな……」
観客のどよめきを聞き流しつつ、僕は
「はっ!」
魔力を解放する。
ダドリーを囲んでいた火球は一斉に動きだし、剣聖候補に襲いかかる。
「ぬあああああああああっっ!!」
爆発。
閃光。
轟音。
終極魔法ほどではないとはいえ、看過できぬダメージが通ったはず。これで戦局は僕に傾いただろう。
念のため、チートコードの《対象の体力の可視化》を選択。
視界に奴の残り体力が表示された。
うん。
思った通り、ダドリーは限界が近い。いまだに倒れないあたり、さすがにこれまでの敵とは格が違うか。
よくよく見てみると、右足がそろそろ危うい様子。これで奴の動きを封じることができれば勝ちだ。
念のため、チートコードの《攻撃力アップ(小)》も選択しておく。油断は禁物だからな。
「けほっ……けほっ……!!」
ダドリーはいまだに黒煙にもたついている様子。
決めるならいまだ。
「おおおおおおおっ!!」
淵源流。
一の型。
真・神速ノ一閃。
僕の振るった剣が、ダドリーの右足を的確に捉えた。
「う、う、嘘だろぉ……?」
情けない声を発しながら膝をつくダドリー。
――終わりだ!!
その頭部のギリギリ手前に、僕は剣を差し向けた。
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