おい、気配をバリバリに感じるんだが
★
決闘の日まであと三日。
僕は順調にギルドの依頼をこなしつつ、できる限り剣の腕を磨くようにした。剣聖候補との決戦を目前にして、さすがに怠けてはいられないからね。
依頼中、僕は不思議な温かさを感じることがあった。
理由はわからない。
周囲には誰もいないのに、なぜか誰かに守られているような……
まあ、よくわからないけどね。
その過程で、不思議な能力を手に入れた。
――――――
使用可能なチートコード一覧
・攻撃力アップ(小)
・火属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)
★吸収
――――――
吸収。
字面だけではちょっと理解ができなかった。
魔物との戦闘時に使ってみたけれど、なにも変わった様子はない。今後わかるのかもしれないが、これについては調査が必要だな。
このように着々と依頼をこなしつつ、僕はラスタール村でのスローライフを楽しんでいた。
あまり気を張りつめても仕方ないからね。適度の休息は必要だ。
だから僕は現在、家のベッドでくつろいでいた。任されていた依頼も終わり、もうすっかり日が暮れている。メアリーが夕飯を作り終えるまではなにもすることはない。
「…………」
なにやら扉から不穏な気配がするが、まあ放っておいていいだろう。
あれで隠れているつもりだろうか。
視線をバリバリに感じるんだが。
「てやっ!」
そしてかけ声とともに突っ込んでくるお姫様を、僕は事もなげに避ける。
「わ、わああああああっ!」
ズドォォォォォォォオン!
そのままタンスに激突したレイが、自業自得の悲鳴をあげる。
……まったく、このお姫様も学習しないな。
「う、うぅ。なんで避けるのよぉ」
「そりゃ避けるだろ……」
いきなり突進されたら普通に恐怖である。
「ふっ」
仕返しに高速で耳に息を吐いてみる。
「あうっ」
レイは可愛らしい悲鳴をあげて倒れ込んだ。顔が真っ赤である。
「ずるい……それはずるい……」
「これに懲りたらもう突進は禁止だぞ?」
「むぅー」
悔しそうに頬を膨らませるレイ。
今更だが、先日ダドリーと対峙したときとは態度がまるで違うな。
あのときはさながら《皇女殿下》って感じだったけど。
彼女の素はいまみたいな感じなのかもしれないな。
ずっと前に、「王族は疲れる」みたいなこと言ってたし。
「……それで、なにか用か? ただ悪戯しにきただけには見えないが」
「ふぅ……アリオスはなんでもお見通しね」
と言われても、ただの勘だけどな。
彼女とは付き合いが長いわけだし。
「これね。アリオスにあげたくて」
「ん……?」
レイが懐から取り出したのは、一枚の色紙。
そこには色とりどりの文字で、僕を励ます文言が所狭しと書かれていた。
――応援しにいきますから! 絶対勝ってくださいね! カヤ
――アリオス様。信じています メアリー
――いつも素敵です! ダドリーなんかに負けないでください! エリザ
――真の英雄たれ! アルトロ
――アリオス様! ぜひ私めにも応援させてください! アリオス様の僕
――わたしとけっこんするまでまけないでね! ミュウ
「こ、これは……」
「ふふ、村のみんなに書いてもらったの。みんなアリオスを応援してくれてたよ」
「そうか……ありがたいな……。僕っていうのはよくわからないが」
そういえば、ここ数日はレイがこっそり動いてた気がする。いつもは一緒に行動していていたのに、僕だけで依頼に出向くこともしばしばあった。
……なるほど、裏で文言を集めてたんだな。
「みんなアリオスの味方だから。だから――」
負けないで。
レイはこっそり呟くと、僕の頬に唇を重ねた。
「…………」
「ふふ、さすがに立場上、いまはこれくらいしかできないけど……みんなで応援してるから。アリオスが外れスキル所持者だろうと、それでも」
ちょっぴり切なさの入り交じったその表情は、いままで彼女が見せることのなかった顔で。
「ありがとう……レイ。また元気が出てきた気がするよ」
「ふふ。負けたら許さないからね」
「大丈夫。もう僕は退かない」
これだけ多くの人に応援されてるんだ。
その想いに応えるためにも、決闘は絶対に勝たないとな。
と。
この雰囲気を好機と読んだのか、彼女が悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「うふふ。そうと決まったら――えいっ!」
ササッ。
僕に突進を避けられたレイは、またしてもタンスに突っ込んでいくのだった。
そのような平和な日々も過ぎ、とうとう決戦の日を迎える。
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