おい、こいつクズすぎるぞ
剣聖リオンの登場によって、ダドリーはあろうことか自己弁護に走った。
「リ、リオンさん! 聞いてくださいよ! みんな俺を馬鹿にしてくるんです!」
「ダドリー。落ち着け」
剣聖リオンは静かな声で諭すと、ダドリーの後頭部を握り、無理やり頭を下げさせた。
と同時に自身も頭を下げ、まずはレイミラに向かって謝罪する。
「レイミラ皇女殿下。この度はうちの息子がご迷惑をおかけしまして申し訳ございません。これには後できつく言っておきますので……」
なんとも父らしい、損得を重視した行動だ。マクバ家としては、まず王族との関係を重視したいんだろうな。
「ふん」
レイミラ・リィ・アルセウスは腕を組み、剣聖リオンを見下ろす。
「リオンさん。あなたの評判、最近明らかに落ちてますわね。挙げ句の果てには、息子のこの所行……あまりにもたるんでるのではありません?」
「返す言葉もありません。皇女殿下には、重ね重ね謝罪申し上げます」
――あれは。
本当は謝る気ないな。
悲しいかな、これでも剣聖と関わった者として、彼が本心から謝罪しているわけではないことがわかってしまった。
「本当にひどいもんじゃのう、リオンよ」
そう言いながら歩み寄ったのは――《剣の名匠》アルトロ。
代々マクバ家に最高の剣を打ち続けてきた名家の末裔だ。
「言ったじゃろう。おまえがその調子じゃと、マクバ家は確実に衰退するとな」
「返す言葉もありません。アルトロ殿にも、重ね重ね謝罪申し上げます」
ほらな。
レイへの謝罪をそのまま口走っているあたり、誠意がまったく感じられない。
「おまえはッ……!」
アルトロもそれを感じ取ったのか、さすがに怒り心頭といった様子だ。
「こほん」
僕は咳払いをかますと、改めて父上――いや、リオンに歩み寄る。
「ところで……二人ともなにしにきたんだよ。率直に言うなら、もう顔も見たくない気分なんだが」
仮にも剣聖に対して軽すぎる口調だが、問題ないだろう。一応血は繋がっているし、敬う気にもなれないし。
「…………」
リオンは顔をあげると、改めて僕に目を向ける。
「アリオスか。……アルセウス救済党での活躍っぷりは聞いている。かつて関わりのあった身としては、嬉しい限りだ」
「それはどうも」
「まわりにはBランク冒険者が大勢いたらしいな? 先輩の足を引っ張らないくらいには、おまえも成長したわけだ」
「…………」
疑ってるのか、もしくは信じたくないのか。
リオンは先日のアジト制圧を、ネガティブな方向に捉えているようだ。
「違うもん!」
それに反対したのは、やはりあのとき助けた小さな女の子。
「アリオスさんはすごい活躍してくれたもん! 一番早く助けてくれたもん!」
「なんだと……?」
リオンの目が細められる。
その片眉がぴくりと動いた。
「待てアリオス。おまえ、その身のこなしは……」
「どうかしたか」
「いや……なんでもない。ありえるわけがないからな」
勝手に自己解決したようだな。
よくわからないが。
「ともあれ、とっとと出ていってくれないか。あんたらと世間話する気には到底なれない」
「……あの気弱な男が、言うようになったものだ」
リオンは口の端を歪めると、懐から一枚の紙を差し出してきた。
「ルーファ殿下からの通達だ。一週間後、《バトルアリーナ会場》にてダドリーとアリオスの決闘を行う予定。それに応じてもらいたい」
「なに……」
ダドリーとの決闘。
しかも王都のバトルアリーナ会場でか。
各種イベントの舞台となる会場で、万を超える観客席も用意されている場所だ。
……なるほど、そういうことか。
体面を考えるリオンのことだ。
悪名高いダドリーに対して、先日アルセウス救済党のアジトを制圧した僕。
王族を護衛する家系として、面子が潰れたとでも思っているんだろう。
……それを挽回するために、大勢の人が見ている前で、僕を叩き潰す気だ。
「…………」
知らず知らずのうちに、自分の拳が震えているのを感じる。
……ずっと大好きだった父。
だけどもう、僕への愛情は微塵もないようだな。
それどころか、マクバ家が繁栄するための土台にしてくるなんて……
「いいだろう」
僕は大きく息を吸い込み、決然と答える。
「その申し出、受けて立つ」
剣聖の息子としてではなく、ひとりの剣士として。
実家との縁を完全に絶つためにも、ここは退いていられない。
「ふふ……そうか」
リオンが一瞬だけ醜悪な笑みを浮かべる。
やっぱり、こっちが本性か。
「勘違いしないでくださる? リオンさん」
僕の腕を掴みながら、レイミラが敢然とリオンを見据える。
「アリオスは負けません。たとえ《白銀の剣聖》が相手であっても!」
「わかったらとっとと失せい、この馬鹿者めが」
続いてアルトロの弁護も入り、リオンたちはなかば追い出されるようにして村から出ていった。
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