おい、なんだこの騒ぎは
「ふふふ。ダドリー・クレイスよ」
レイ――改めレイミラ・リィ・アルセウスは口の両端だけを吊り上げる。
「いきなり我が母の故郷を荒らすだけでなく、住民に危害を加えるとは……いったい、どういう了見かしらね?」
ニコニコ笑いながら歩み寄るお姫様。
その様子に、いつもの天真爛漫さはない。
これは――怒ってるな。
めっちゃ怒ってるな。
「しかも、私のアリオスを侮辱するなんて……。よっぽど痛い目に遭いたいらしいわね? ふふ、火炙りの刑かメッタ刺しの刑か、それとも……うふふ、どんな刑がお好みかしら?」
「ひいっ……!」
これにはさすがに参ったらしい。
ダドリーは一歩後退し、レイから距離を取った。
まあ、マクバ家は王族との繋がりがあってこそ栄えてるわけだしな。
僕も、追放前は父上に王族との関わり方をやかましく教えられた。
だからこそレイには手を出せないんだろうな。
わかる。
わかるよその気持ち。
いまの僕にはもう、そんなしがらみはないけどね。
「……なにをおっしゃるのですか、レイミラ様!」
ダドリーはそれでも退かない様子だ。
「どうしてそんな奴の味方をするのです! そいつは外れスキルの所持者で……嫌われ者で……なにもできないクズ野郎なんですよ!」
「あら。まだわかっていないようね。あなたがその気なら――」
レイミラが言いかけた、その瞬間。
「アリオス様を侮辱するな! このポンコツ剣聖めが!!」
見覚えのあるおっさん冒険者が、ダドリーに小石を投げつけた。
あいつは――マジか。
かつてギルド内で喧嘩を吹っかけてきて、その後は驚きの変わり身をしたC級冒険者だ。
「そうじゃそうじゃ! おまえにアリオス殿のなにがわかる!」
次いでギルドマスターのアルトロが叫び声を発した。
「己の欲に囚われし哀れなマクバ家など……もう剣聖とは呼べぬわ! 王都を離れて正解だったわい!」
「少なくとも……あなたよりは立派な剣士ですよ。アリオスさんは」
そう言うのはAランク冒険者のカヤ。
彼女たちだけじゃない。
「そうだそうだ!」
「アリオスさんを侮辱するなー!」
「私の恩人をクズ呼ばわりしないでください!」
「お兄ちゃんは私の旦那さんよ!」
かつて僕が関わってきた村人たち。
そして、アルセウス救済党に囚われていた人々。
彼ら全員が、一様に僕を庇い始めた。石ころを投げる者、大声で叫ぶ者……そのやり方は皆それぞれだが。
たしかに言えることは――みんな、僕の味方をしてくれていることだった。
「いてっ……や、やめろ! いてててててて!」
四方八方から石を投げつけられ、哀れにもうずくまるダドリー。
「いたい! いたいって! やめてくれよっ……! くそ、どうなってんだよこれ……!」
ちょっと泣いてるのかな? 知らんけど。
「あら。これは……」
その様子を見たレイミラが、ふっと笑みを浮かべる。
「私が庇い立てするまでもありませんでしたね。これはたしかにあなたが勝ち取った信頼です。アリオス」
「みんな……」
僕なんて、もう今後受け入れられるはずもないと思っていた。
剣聖候補という肩書きを失ったから。
外れスキル所持者だったから。
それでも――僕の居場所は、たしかにここにあった。
「くそったれめ! かくなる上は……!」
耐えきれなくなったのか、ダドリーが剣の柄に手を添える。
「…………っ」
あいつ、この場で剣を抜くつもりか。それだけは――
「――やめておけ。ダドリーよ」
ふいに。
懐かしい、それでいて二度と聞きたくなかった声が一帯に響きわたる。
振り返るまでもない。
この声は――
「村の皆様。この度は我が息子が失礼を致しました」
剣聖リオン・マクバだった。
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