表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/188

剣聖の先へ

 ★


「ここは……?」


 目覚めたとき、僕はやはり見慣れぬ場所にいた。


 王城……? だろうか。

 けれども、現代のアルセウス王城とはどこか違う。装飾の配置も微妙に異なっているような。


 加えて、一緒にいたはずのレイやレミアもいない。


 その代わりに――またもがいた。絶対に会えるはずのない、初代剣聖ファルアス・マクバが。


「女神よ……どうですか。やはり避けられぬ運命ですかな」


「ええ。人の子ではさすがに不可能でしょう」


 そう返答するのが、驚くべき美貌を備えた女性。心なしか、彼女の周囲を儚げな光が包んでいる。


 というか、女神って……

 嘘だろ?

 おとぎ話に登場する、女神ディエスのことか?


「ま、致し方ありませんね」

 女神と呼ばれた女性はどこか悟った表情で呟く。

「《転生術》は元より禁忌の術。それに手を染めるくらいならば、後世の子に未来を託すのが妥当でしょう」


「後世の子……。やはり、私の子孫ですか」


「ええ。あなたには猛き剣士の血が流れています。それを受け継ぐ子孫も、必ずや才に恵まれるでしょう」


「《チートコード操作》……でしたか。ことわりを超えた力を与えるからには、精神的に熟した者である必要がありますな」


「ええ。ですからこのスキルを授けるのは、マクバ家で最も精神的に優れた者に限定します」


「……そうですな。《剣聖》の名をいいように扱う馬鹿者が現れんとも限りません」


 そして女神はなんと、僕のほうへとくるりと振り向いた。

 その表情は、どこか物憂げで。


「ふふ……。数千年後には、この光景をあなたの子孫が見ていることになるんですね。私には、あなた・・・がどんな名前なのかもわからない」


「あの」

 意を決して問うてみる。

「すみません。……僕のことが見えているんですか?」


 だが返事はない。

 やはり僕は《映像》だけを見せられているようだ。数千年前、女神と初代剣聖がつくりあげた謎のやり取りを――


 そして……数秒後。

 女神は、そっと僕に向けて手を伸ばす。


「ファルアスの子よ。あなたは現在、きっと苦難を強いられているでしょう。ファルアスの子にも関わらず、授けられたのは前例のないスキル。周囲からはガッカリされたかもしれません」


「っ…………」


 痛いところを突かれた。


「でも、覚えていてください。あなたは誰よりも素敵で……誰よりも強いのだと」


「ふふ、では私からも一言」

 初代剣聖ファルアスも、僕の瞳をしっかり見据えた。

「我が子孫よ。おまえはきっと、いままで足掻き苦しんできただろう。だが忘れるな。おまえには――私たちがついている」


 なんだろう。

 僕のことは見えていないはずなのに、心を込めて訴えてくるような……


 ほろり、と。

 僕の瞳を一筋の滴が伝う。

 実家を追放されたことで傷ついた心が、すこしだけ癒された気がした。


「あともうひとつ」

 言いながら、ファルアスが悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「我が子孫よ。もし親族に不当な扱いをされたのであれば、思いっきり叩きのめしてしまえ! そのほうが当人のためにもなる」


 はは。

 思いっきりか。

 もうマクバ家とは関わりを持たないと決めたけれど……まあ、悪名高いダドリーのことだからな。今後、なにをしてくるかもわからない。


「私からもひとつ」

 女神も僕に向けて口を開いた。

「あなたは今頃、謎の宝石について悩んでおられるでしょう。ですがそれはあなたが持っていてください。あなたが持っていれば、原則・・は暴発しないはずです」


 ……そうなのか。

 たしかに、さっき暴発したときはレミアが持っていたからな。


 少なくとも、昨晩では何事も起こらなかった。


 ……というか、すごいな。

 この二人、僕の道に応じてヒントをくれてるのか。女神と初代剣聖――その名は伊達ではない。


 だが、いつまでもこの時間は続かない様子。


 女神は切なそうに、見えていないであろう僕を見つめた。


「……そろそろ時間切れですね。幸運を祈っています。あなたの道に、幸あらんことを」


「なあに大丈夫でしょう。私の血を引いているのですぞ」

 ファルアスは快活に笑い、同じく見えていないはずの僕に片腕を差し出した。

「また会おう、我が子孫よ。決して――馬鹿者に屈するでないぞ」


 その瞬間。

 僕の意識は、またしても遠のいた。


  ★


「スっ……! アリオス!!」


 レイの泣き声で目が覚めた。

 うっすら目を開けると、寝転がる僕にひたすら泣きじゃくっているお姫様。


 相当に心配してたんだろうな。

 目がかなり腫れている。


「レイ……? ここは……?」

 どうやら、レミラの研究所に戻ったようだな。周囲には見覚えのある光景が広がっている。

「アリオス! 無事なの! 無事なのね!?」


「ああ。どこも大事ない」


「……っ! よかったぁ……!」


「お、おいっ! ふがふが……」


 そうして抱きついてくるレイに、僕は呼吸ができなくなった。おい、ものすごい勢いで押しつけられてるぞ。


「……にしても、不思議な現象じゃ」

 そう呟くのは、凄腕の魔導具師レミラ。腕を組み、なにかを考え込むように二の句を継げる。

「アリオス殿。もしかして、意識が別次元に飛ばされてはおらんかったか?」


「別次元……」


 言い得て妙だな。

 たしかにあの現象は、まったく未知の空間に飛ばされたに等しいが……


「ううむ。神の遺石……なかなか興味深い……」




 ――レミラが呟いた、その瞬間。




 ジリジリジリジリ!!

 ふいに大きな機械音が響きわたり、僕たちは肩を竦めた。


 これは……通信機器か。

 レミラが王都に住んでいたときに開発した魔導具で、遠方にいる者とも通話ができる優れ物だ。


 ……まあ、あまり普及されていないので、ギルドなどの施設にのみ置かれている状況だが。


「はい。こちらレミラ……」

 レミラが受話器を手に取る。

「なんじゃアルトロか。アリオス殿ならもう来ておる――なんじゃと?」


 レミラがふいに眉をひそめる。


「わかった。すぐに伝えよう」


 そう言って深刻な表情で通話を切ったレミラに、僕は心なしか嫌な予感を覚えた。


「アリオス。緊急事態じゃ。ラスタール村にダドリー・クレイスが現れた模様。あなたの召使い――メアリーが危ないとのことじゃ」


 

【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


すこしでも

・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


今後とも面白い物語を提供したいと思っていますので、ぜひブックマークして追いかけてくださいますと幸いです。


あなたのそのポイントが、すごく、すごく励みになるんです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン


何卒、お願いします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 「コミカライズ一巻」が【 2022年9月30日 】に発売されます! 下記の画像クリックで書報ページに飛べますので、ぜひ今のうちに予約してくださいますと幸いです!▼ 明日9/30、チートコード操作のコミカライズ一巻が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下の画像クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
[気になる点] ん?もう家に仕えて居ない一般人に手を出したらマズイんじゃないの? 家の中なら、家長の権限で揉み消せるかもしれないけど。 それに、ダドリーはマクバ性名乗ってないって事は、養子になった訳で…
[一言] 思い切り叩きのめすだけで良いの?当人の為になることしてやる謂れはなくない? 両腕と利き目くらいは貰っておいても良いんじゃね?
[気になる点] レミアとレミラがごっちゃになってました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ