おい、なんか始まったぞ
「こほん」
僕は咳払いをかますと、無理やり話題を変える。
「そんなことより……レミアさん。これを見ていただきたいんですが」
「ふむ?」
レミアが首を傾げている間に、僕は懐から《漆黒の宝石》を取り出す。
各地で頻繁に起きていた魔物の大量発生。
それの原因と考えられる物だ。
「む……」
レミアは宝石を見るや、魔導具師の顔になった。表情をきっと引き締め、宝石をじっと見つめる。
「アリオス。手に取ってもいいかの」
「はい」
返事をしつつ、宝石をレミアに渡す。
「うーむ、なるほど。これはつまり……ふむふむ、こういう魔力回路が出来上がっているわけじゃな……」
凄腕の魔導具師はそのまま自分の世界に入ってしまった。ブツブツ独り言を呟きながら、しばし宝石に見入っている。
「む……これを発動するには、つまり……って。わっ!!」
瞬間。
宝石が漆黒の波動を発し、研究所内を暗く染め上げる。
この嫌な気配。
もしや――
「ワオオオオン!!」
やはりというべきか、数匹のホワイトウルフがどこからともなく姿を現す。例によって、さっきまで魔物の気配なんて微塵もなかった。
「アリオス!」
「ああ」
レイの呼びかけに応じ、僕は剣の柄に手を添える。そしてたちまちのうちに出現した数匹のホワイトウルフを、剣撃によって一掃する。
「な……んと。ホワイトウルフを瞬殺しおった……」
レミアは目をぱちくりさせるや、まじまじと僕を見上げた。
「おまえ……いや。アリオス殿。やはり、あなたは強すぎではあるまいか?」
「いえいえ、とんでもないですよ」
「ふふ。謙遜するな。性格も悪くなさそうじゃし……どうじゃ、ここに住んでみないかの?」
「はは。謹んでお断りします」
「即答か。がっかりじゃのう」
僕だって、こんななにがあるかもわからない場所に住みたくはない。魔導具師じゃあるまいしね。
「さて。アリオス殿。宝石の解析結果じゃが」
レミアは表情を引き締めると、改めて本題に戻った。
「結論から言おう。現代では解析不能。私の範疇から大きく抜けておる」
「え……」
マジか。
凄腕の魔導具師でさえ解析できないって……いったいどういうことだよ。
「おそらくじゃが、この宝石は一定の魔力量を注ぎこむことで回路が活性化し、力を発揮するのじゃろう。そこまでは一般の魔導具とさして変わりない。――じゃが、それだけで魔物を呼び寄せるなんぞ、常軌を逸しておる」
「そう……ですか……」
まあ、そうだよな。
僕だって、魔物を出現させる道具なんて聞いたことがない。
匂いとかで近くの魔物を呼び寄せる物はあるが、この宝石はまさしく魔物を《瞬間移動》させているからな。
「強いて言うなれば、古代に伝わりし遺石……。神の遺した奇跡の遺物かもしれぬな」
「神の遺した……」
そこまでいくとさすがに荒唐無稽だな。
たしかにこの宝石は尋常ならざる力を誇っているが、神だの遺石など、おとぎ話じゃあるまいし――
その瞬間。
ウォォォォォォォオン……! と。
漆黒の宝石が奇妙な音をたて、再び波動を発し始めた。さっきと同様、室内が暗く染め上げられる。
「な、馬鹿な……っ! 私はなにも回路をいじっておらぬぞ……!!」
レミアが目を見開く。
――――――
完了。完了。
女神ディエスから言を授かりました。
起動します。
起動します。
――――――
僕の視界に謎のメッセージが浮かび上がり。
「うっ…………」
そして――意識が遠のいた。
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