おい、触るな
『ガガガ! ガガガガガ!!』
巨大兵はまだ攻撃を諦めないようだ。野太い声を発しながら剣を押し込んでくるが、僕の宝剣はびくともしない。
『ガーッ! ガーッ!』
一応、巨大兵は本気を出しているみたいだな。
必死な声で剣を押し込んでくるものの、それでも僕は動じない。
まあ、レミアも《実験》って言ってたからね。そこまで強い相手ではないんだろう。出会い頭に強力な敵と戦わせられるなんて、普通ならありえないし。
「さて。いくぞ」
チートコード発動。
攻撃力アップ(小)。
「淵源流……一の型。真・神速ノ一閃」
『グ、グガァァァァァァアア!!』
僕の振るった高速の剣技が、巨大兵を的確に捉えた。
やはりたいした相手ではなかったらしい。
『ヌ、ヌアアアアッ……!』
その一撃だけで、巨大兵は崩れ落ちた。
『ば……馬鹿な』
どこからともなく、低い女性の声が聞こえてくる。
『私の魔導具が……こうもたやすく……』
「さて、これでいいでしょうか?」
僕はため息をつきながら、剣を鞘に収める。
「そろそろ開けてくださいよ。謎の宝石について、貴女の意見を聞きたい」
『…………』
レミアはしばらくの間黙り込む。
『元・剣聖候補よ……。巨大兵に剣を押し込まれていたはずが……まったく疲弊していないのか……?』
「ええ、そこまでは。貴女もさすがに、そこまで強い魔導具を出してきたわけじゃないでしょう?」
攻撃力を落としたとはいえ、ほとんど力を感じなかったからな。
『……っ』
しかしどうしたことだろう、レミアの声はひどく悔しそうだった。
『信じられぬ。私がここまで打ちのめされるとは……』
「あ、あの。レミアさん?」
『元・剣聖候補。名をなんといったかな』
「あ、アリオスです。アリオス・マクバ」
『アリオスか。いいだろう。通るがいい。連れの者も入るがよかろう』
シュイーン、と。
どんな仕掛けが施されているのか、目前の扉が自動的に開かれた。本当にすごい魔導具師みたいだな。
ともあれ、やっと認められたようである。
いまはなすべきことをなすまでだ。
「あ、ちょっと待って」
不安そうなレイが、またしても腕を絡ませてくるのだった。
★
偏屈な魔導具師、レミア・レイアス。
あのアルトロをしてくせ者と言わしめた人物。
どんな人だろうと思っていたが――思いがけず、随分と小さかった。
うん。
実際に口には出さないけれど。
小さかった。
「……わかっておるぞ。おまえがなにを考えておるか」
頬を膨らませて僕を見上げるレミアが、悔しそうに声を震わせる。
「ふんだ。見た目なぞ関係ない。私は最高の魔導具師、よいな!!」
「はい。心得てます」
「微笑ましい目で見るな!」
うるうるした瞳で怒られた。
まあ、アルトロいわく実年齢は22歳みたいだからな。僕よりは年上なわけで、だから態度を崩すわけにはいかない。
「……でも、ここの仕組みにはびっくりしました。すごいですね」
「ふん。そうだろう」
ちょっぴり嬉しそうに頷くレミア。
もちろんお世辞じゃない。
実際にも、この家――研究所といったほうが適切か――は普通とは明らかに違っていた。
レミアが呼んだだけで歩いてくる人形とか。
さっきの鎧をすこし小さくしたような兵士が歩いていたりとか。
凄腕の魔導具師であることには違いないだろう。
「すごいと言えば、アリオス、さっきのはなんじゃ。あの鎧兵士は指定Bクラスの強さはあったはず。それを事もなげに倒すとは……」
「へ……?」
指定Bの魔物クラス?
嘘だろ?
というか、そのクラスの敵を普通にけしかけてくるとは……アルトロの言っていたことは本当だな。
「しかも攻撃を受けて平然としておるとは……いったいどんな身体をしておるのじゃ。どれ、研究してもいいかのう」
「いやいやいや! やめてくださいって」
ペタペタ触ってくるレミアを、僕はなんとか制したのだった。
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