おい、攻撃力操作がやばすぎるんだが
見事ギルドを抜け出した僕たちは、ラスタール村からほど近い森林地帯を歩いていた。
――ネストル森林。
アルトロいわく、凄腕の《魔導具師》が住んでいるとのことだ。
「いゃゃゃああ! アリオス、変な虫が!」
「おい、落ち着け」
「やだぁ! 怖いってばほんと!」
「まったくおまえは……っておい、抱きつくな!」
「だ……だって!」
「ちょ、当たってるっての!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら歩き続ける僕とレイ。
レイ、意外にも虫が苦手なんだよな。
……さて。
ちなみに魔導具というのは、端的に言って魔法の込められた道具のことだ。
たとえば、飲むことで各種ステータスが一時的に上がる薬などは、補助魔法を応用して出来上がったものとされている。
そして魔導具師とは、それらを開発する人々を指す。
その魔導具師界でも頂点に立つのが――いまから僕が訪ねる人物だ。
様々な道具を新開発したにも関わらず、さまざまな表彰を拒み、いまは隠居生活をしているのだという。
名をレミア・レイアス。
「一応、紹介状を送っておくがの。かなり偏屈な女じゃから気をつけなされよ」
あのアルトロをしてここまで言わしめるほどの傑物だ。
……正直、僕もちょっと面倒くさいんだけどな。
アルセウス救済党で手に入れた《漆黒の宝石》を解析できるのは、凄腕の魔導具師にならないと難しいようだ。
「こ、こんな変なトコに住んでるなんて……そのレミアって人、絶対ろくな人じゃないわよ」
「ボロクソ言うな……」
だがこれについては、早急に対策を取るべき案件だろう。
勝手に暴発して、またホワイトウルフを呼ばないとも限らないからな。
そんなやり取りをしているうちに、一軒の家屋が見えてきた。森林地帯には明らかに不釣り合いな、鉄製の建物。
――いや。研究所とでも言うべきだろうか。
レミアは世間の喧噪を離れ、いまでも道具の開発を行っているのだという。
いったいなにを作っているのかは不明だがの……とアルトロがため息をついていたのを覚えている。
「すぅ……」
僕は息を吸い込むと、ドアをノックしようとして――
『来たか元・剣聖候補よ。アルトロから話は聞いているぞ』
「へっ……?」
レイが目を見開き、周囲をきょろきょろ見渡す。
だが無駄だ。
まわりに人の気配はない。
おそらく――魔導具かなにかでこちらを監視し、遠くから声を投げかけているんだろう。
『ほう、ずいぶんと冷静だな元・剣聖候補。これを見ても驚かぬか』
「まあ……これでも鍛えていますからね」
『クク、面白い。これでこそ実験のしがいがあるというものよ』
「実験……」
僕がオウム返しに呟いた、その瞬間。
「……っ!」
ある予感を感じ取った僕は宝剣レバーティを抜き、戦闘の構えを取る。
『ヌオオオオオオオッ!!』
刹那、おぞましい胴間声が響きわたる。
と同時、脇の鉄製の小屋から、巨大な鎧が出現した。おぞましいことに、中には生物らしき者がいない。
「な、ななな、なにこれっ!」
レイがパニックを起こす。
「ああ……これはさすがに驚く」
僕もこんな魔物は見たことがない。
おそらく――レミアが秘密裏につくりあげた《魔導具》か。
『グオアアアアアアッ!!』
巨大兵はどこからか叫び声を発すると、高々と剣を振りかぶる。
戦う気満々のようだ。
――いいだろう。
そっちが実験をするなら、僕も実験をするまでだ。
「スキル発動……チートコード操作」
――――――
使用可能なチートコード一覧
・攻撃力アップ(小)
・火属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)
――――――
使用する能力は、もちろん《対象の攻撃力の書き換え(小)》。
どこかで試したいと思っていたが、こんなにも早く機会に恵まれるとはな。
能力を発動すると、視界に数奇な文字列が出現した。巨大兵の上部に、それは浮かび上がっている。
――――――
9C82G1T4 8A57E838
9C82G1T8 2483xxxx
コードの操作を行いますか?
――――――
迷わず心中で「はい」と唱える。
すると今度は視界に次の文字列が浮かんだ。
――――――
下記のコードからお選びください。
CF65(2倍)
CF25(4倍)
CD87(1/2)
CD64(1/4)
――――――
なんと。
やはりというべきか……対象の攻撃力を変化させることができるようだ。
しかも上げることも下げることもできる模様。
「コード操作……CD64」
とりあえず、僕は攻撃力1/4を選択した。現時点では一番効果がありそうだからな。
『ガアアアアア!!』
攻撃力を下げられた巨大兵が、すさまじい勢いで僕に剣を振り下ろす。
『はっはっはっは! とくと味わうがよい! この巨大兵はできる限り強化を――って、え?』
レミアの声が驚愕に包まれる。
巨大兵の剣を、僕が軽々と受け止めたからだ。
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