おい、随分と自信のありそうな奴らに襲われたんだが
間一髪だった。
ユウヤが時間を作ってくれたおかげで、メアリーをすんでのところで助けることができた。
ローブの男があのままなにをするつもりだったのかは……想像もしたくない。
ともあれ、よかった。
彼女が無事でいれば、それだけで。
「メアリー……」
剣を鞘に収めながら、僕は顔馴染みのメイドに視線を向ける。
ひどく疲れているようだった。
瞳からは生気が失われ、服もボロボロ。さっきまで泣いていたらしく、頬を雫が伝っている。
さぞひどい目に遭ったに違いない。
「アリオス様……どうして……」
「さっき不穏な気配を感じてね。そのままここまで突き止めてきた」
「さ、さっきって……」
信じがたい様子の彼女に、レイが苦笑とともに歩み寄る。
「ふふ。アリオスの凄さは、いまに始まったことじゃないわ」
「…………いやいや。さらに訳わからないですよ。もしかしてあなたは……」
その際、メアリーが口をつぐんだのは賢明だろう。
この場所でレイの正体を明かすのは得策ではない。
「待っててね。いま回復するから」
レイはそう言いつつ、聖魔法を発動する。
柔らかな輝きがメアリーを包み込み、溶けていく。光がメアリーに吸収されるたび、彼女の傷も少しずつ癒えていく。
「レイ。メアリーは頼んでいいか」
「うん、頼まれました」
「貴様っ……!」
僕とレイの会話を、男の叫び声が切り裂く。
前方に目を向ければ、灰色ローブを羽織った男がひとり。さっきまでは顔面まですっぽり隠していたが、僕が攻撃したせいか、怒り狂った表情を露わにしている。
ちなみに、さっきの《神速ノ一閃》は牽制のための攻撃だ。こいつからは色々と情報を引き出したいので、簡単に死なれては困る。
そんな思索に耽っていると、灰色ローブの男は一層に目を血走らせ、大きく叫んだ。
「うるさい小虫が侵入しているとは聞いたが……ふん。よりによって私の楽しみを邪魔するとはな……! 覚悟はできているか!」
……うるさい奴だな。
正直すぐにでも始末したいところだが、こいつからは聞きたいことが山ほどある。倒すのはそれからでいい。
――と。
「やれやれ。ここにいたか侵入者」
「色々と嗅ぎ回りおってからに」
背後から二つの気配。
視線だけをそちらに向ければ、メアリーをいたぶろうとしていた男と同様、灰色のローブを身にまとった男が二人。
……こいつらは剣士か。
全員が腰に剣を下げ、油断ならない視線を僕に向けている。身のこなしにも一切の隙がない。
「ふん。馬鹿め。どうやらそこの女を助けにきたようだが……飛んで火に入る夏の虫。わざわざ命を捨てにくるとはな」
灰ローブのひとりが厳かに言う。
相当の自信があるようだな。
言うまでもなく、油断のできない相手だろう。
「ア、アリオス…様…。私のことは構いません。お逃げ、ください」
さすがにまずいと思ったのだろう。メアリーが細い声で呟く。
そんな彼女に向けて、僕はふっと微笑んだ。
「気にしないでいい。君に涙は……似合わない」
懐から一枚の布を取り出し、メアリーの涙を拭ってみせる。
「あ……」
「大丈夫。僕は負けない。絶対に切り抜けてみせる」
謎スキル――チートコード操作。
これによって、僕は地位と家族を失った。
だがその代わりに――何にも代え難い、大切なものを得た。
ブラックグリズリーにジャイアントオーク、そしてホワイトウルフの群れ。それらを倒すことのできた《チートコード操作》ならば、あるいは……!
「おい、聞いたかこいつ! 切り抜けてみせる――だってよ!」
「ククク……哀れなことだ。我らの強さに気づかないとは」
「表社会に生きる哀れな狗に教えてやろう。本当の強さというものをな!」
男たちはそれぞれ剣の柄に手を添え、戦闘の体勢を取る。やはり隙のない立ち居振る舞いだ。でかい口をたたくだけはある。
「ア、アリオス様……お逃げくださいっ……!!」
脇ではメアリーがいまだに泣き叫んでいる。
「すぅ……」
僕も戦闘の構えを取る。
意識を研ぎ澄まし、あらゆる神経を男たちの挙動に向ける――
びくっ、と。
男のひとりが身震いをする。
「な、なんだ、この気配は……?」
「構うな! こちらには栄誉ある《アルセウス救済党》が三名! 負ける謂われはない!」
「おおおおおおおおっっ!!」
いっせいに男たちが駆けだしてくる。
――が、遅い。
「うおおおおおおおっ!!」
叫声をあげながら三人がかりで襲いかかってくるが、僕には全員の行動が読めていた。
一秒後。背後からの一撃。
その次。左側面からの切り上げ攻撃。
次。右側面からの上段振り下ろし攻撃。
そのすべてを、僕は確実に受け止める。剣と剣がぶつかるたび、耳をつんざく金属音が響きわたる。
そして。
「すっ……」
チートコード発動。
攻撃力アップ(小)。
――カキィィィンと。
僕が剣を振り払うと、その風圧によって三人が大きく仰け反る。また宝剣レバーティの能力が発動し、三人の足が凍り付く。
「なっ……」
「馬鹿なっ……!!」
こうなってはもはや奴らは絶好の的。
淵源流。
神速ノ一閃。
「う、うわあああああっ!!」
荒れ狂う刀身が、男たちに容赦なく襲いかかった。
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