外れスキルの所持者は、剣聖を超えていた
★
メアリー・ローバルトは、己の不運を嘆いていた。
新たな剣聖の跡継ぎ、ダドリー・クレイス。
彼に嫌気が差し、メアリーはマクバ家を抜け出した。
彼女だけじゃない。他にも多くのメイドがマクバ家を抜け出していた。
とはいえ、メアリーに行く宛なんてない。
強いて言うなれば、ラスタール村だろうか。
風の噂で、《外れスキル所持者》がそちらに向かったと聞いたのだ。
もしかすれば、そこにアリオスがいるかもしれない。
――ほら、これあげるから泣かないで。君のために作ったんだ――
どうしても忘れられなかったのだ。
優しい表情でハンカチを手渡してくれた、前の剣聖候補を。
――その道中で、謎の集団にさらわれた。
悲鳴も抵抗もままならなかった。
呆気なく手足を拘束され、謎の場所に連れ込まれた。
その動機も、集団の正体も、メアリーにはわからない。
けれど。
「ククク、いい女だ。色々と使えそうなことよ」
「くうっ……」
メアリーは現在、拘束されていた。
壁面に立たされ、両手と両足を鎖に繋がれて。
力を持たないメアリーには、もはやなすすべがない。
「君もたしか、王都の住人だったね。クク、これはいい材料になりそうだ」
「あ、あんた……」
メアリーはそっと相手を睨みつける。
灰色のローブをまとい、顔を完全に隠した謎の男。他にも同様の格好をした者を何人か目撃している。
こいつらはいったい何者なのか。なぜ自分をさらったのか。
なにもわからない。
なにもわからないまま、メアリーは現在、拘束されている。
「だが、いまは美しい女性が目の前にいる喜びを言祝ぐとしよう。ククク……」
男の手が、メアリーに向かってゆっくり伸ばされていく。
「いや。やめて……!」
このとき、脳裏に浮かんだのはやはり彼の顔だった。
アリオス・マクバ。
もし叶うのなら、もう一度、彼に会ってみたかった――
「メアリー!!」
ふと聞こえたのは、懐かしいあの声。
泣き虫だった私をずっと気にかけてくれた、優しい男性の声。
笑い話だ。
彼を思うあまり、こんな瀬戸際で幻聴まで引き起こすとは。
「おおおおおおおおっ!!」
いや。
違う。
幻聴じゃない。
この懐かしくも頼もしい、この声は……!?
「アリオス様!?」
彼は剣聖候補で、だけど《外れスキル》の所持者で。
王都では誰もが彼の落ちぶれっぷりを噂していて。
けれど――次の瞬間に彼が見せた剣技は、ダドリーどころか剣聖リオンすらも圧倒しかねない迫力を秘めていた。
「淵源流、神速ノ一閃!!」
「ぬ……おわああああああっ!!」
ローブ男の悲鳴が響きわたった。
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