おい、やばいもの見つけたぞ
草原の地下部分で見つかった、謎のアジト。
内部から漂う雰囲気からして、もはや尋常ではない。空気そのものが薄く汚れている気がする。
僕がそうと望めば、チートコード操作を発動し、火属性魔法で木っ端微塵にすることもできるだろう。
だが、ひとまずそれは控えておく。
内部になにがあるかわからない以上、魔法ですべてを消し炭にするのは得策ではない。
だから僕たちは現在、警戒しながらアジトのなかを進んでいた。
「これは……ただならぬ雰囲気だね……」
周囲を見渡しながら、ユウヤがぞっとした表情で言う。
「しかも、こんな場所にアジトができていたなんて……。アリオス君、きみはすごい大発見をしたかもしれないよ」
「はは……そうでしょうか」
「うん。少なくとも、新人冒険者としては大きすぎる手柄だ」
すごい大発見。
たしかにそうかもしれない。
だが、これですべてが終わったわけではない。
奥地になにが潜んでいるかわからない以上、決して油断するわけには――
「ん……?」
ふと僕は目を細めた。
なにかある。
見覚えがあって、どこか懐かしいものが。
「アリオス? どうしたの?」
問いかけるレイに対し、僕は数メートル先の地面を指さす。
「あそこ。なにか見えないか?」
「え……ハ、ハンカチ……?」
そう。
あれはハンカチだ。
それもただのハンカチじゃない。
かつて僕がマクバ家に住んでいた頃、仲の良かったメイドにあげたものだ。
泣き虫だったその子をすこしでも助けてあげたくて、メイドの名の縫われたハンカチをあげた。
「…………」
僕は無言でそれを拾い上げると、薄く汚れてしまったそれをひっくり返す。
そこにはこう書かれていた。
「メアリー……」
「メアリー、って……」
ハンカチを覗き込んだレイが、大きく目を見開く。
「マクバ家のメイドじゃないの……!? どうしてその子のハンカチが……?」
「わからない。だけど」
嫌な予感がする。
おっちょこちょいな彼女のことだ。
不穏な事件に巻き込まれていなければいいんだが……
「ワォォォォォォォオン!」
獣の声が聞こえてきたのはそのとき。
脇に目を向けると、またしてもホワイトウルフが数匹。口から涎を垂らし、僕たちを補食せんとばかりに近寄ってくる。
「……また、急に現れたか」
つい数秒前まで、ホワイトウルフの気配なんて微塵も感じなかった。
それが再び急に現れたということは。
「確定だな。ここにはやはり、なにかが潜んでいる」
僕は無言で剣を抜く。
そして腰を落とし、戦闘の構えを――
「いや。待ちたまえ、アリオス君」
僕の肩を、ふいにユウヤが叩いた。
「ここは私が受け持つ。君は先に行きたまえ」
「え……」
「ふふ、忘れてるかもしれないけど、私だってBランク冒険者。これしき、乗り越えてみせるさ」
果敢な表情で笑うユウヤ。
だが――彼だってわかっているはずだ。
急に魔物が現れる現状を鑑みれば、敵は目前のホワイトウルフだけとは限らない。さっきと同様、また無限に出現するかもしれないのだ。
だからこそ、ここでホワイトウルフと戦うことで時間が取られかねないわけだが。
「心配するな、アリオス君。きみには助けるべき人がいるんだろう」
その覚悟の決まった表情を、どうして否定できるだろう。
「……わかりました。幸運を、ユウヤさん」
「幸運を。リオン殿でもダドリー殿でもなく、君こそが真の剣聖であると――私は信じているよ」
ユウヤがぐっと親指を立てたのを確認し、僕とレイは先に進むのであった。
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