おい、これやった奴頭おかしいだろ
しん、と。
あれだけ猛威を振るっていたホワイトウルフは一瞬にして消滅した。
ユウヤも。
レイすらも。
ぽかんと口を開けたまま、僕とホワイトウルフの死体を交互に見やっている。
「まあ……その、あれです」
重たい沈黙に耐えかねて、僕はぼそりと呟く。
「ちょっとやりすぎてしまったようです。あはは……」
「「ちょっとっていうレベルじゃない!!」」
総員からツッコミが入った。
いやいや。
僕だってまさか、技ひとつで大群を殲滅できるとは思ってなかったんだよ。
だってほら。
百体以上もいたんだぞ?
それが一瞬で全滅とか……やった奴頭おかしいだろ。
「はぁ……まったく君って人は……」
目をぱちくりさせながら、Bランク冒険者のユウヤが問いかけてくる。
「昨日の戦いもかなり肝を抜かれたけど……今回はなにをしたんだい?」
「いえ……だから剣を振るっただけで……」
「剣を振るったらホワイトウルフの大群が消滅していたのかい?」
「そ……そうなります」
「そうか。うん。君がおかしいことがまたよくわかったよ!」
なんか誤解されてしまった気がするが、本当にただ剣を振るっただけだ。
これ以上弁解しても墓穴を掘りそうなので、黙っておくけれど。
「うふふ♪ さすがはアリオス!」
レイだけは嬉しそうに両手を重ね合わせていた。
「はぁ!? アリオスだぁ?」
剣呑な声が響いてきたのはそのときだった。
振り返れば、屈強そうな冒険者がひとり。腕に覚えがあるのか、内面から滲み出る自信もかなりのものだ。
「思い出した! おめぇ、アリオス・マクバだろ!」
「そうですが……」
少々嫌な予感を覚えつつも正直に答える。
「おーおーおー。そうか、てめぇがあのアリオスねぇ」
男は唇を尖らせ、わざとらしく煽ってくる。
「王都でリオン様が嘆いてたぜ。不出来な実子を持ったせいで大変だってな。てめぇ、カスのくせして剣聖様に迷惑かけんなや」
「…………」
「こんなことしてるのも、実は名誉挽回を狙ってんだろ? でも残念でしたー。俺の目はごまかせねぇ。てめぇ、いま不正しやがったよな?」
「不正って……」
たしかに《チートコード操作》は強すぎるけれど。
それでも、正当なスキルによる戦い方だ。
「それくらいにしておけ、ユージェス」
ユウヤが僕を庇って出た。
「たしかに彼の強さは未知数だが、私たちは彼に助けられた。それに感謝しこそすれ、なじる必要はないだろう」
「はっ! てめぇ、同じBランクのくせにひよってんじゃねえよ!」
ユージェスと呼ばれた冒険者がつまらなそうに悪態をつく。
「いや、別にひよってはないんだが……」
「とにかく、ホワイトウルフを倒したのはアリオスじゃなくて俺様だ。それでいいな?」
なんだよ。
なんだかんだ言って、結局は手柄狙いかよ。
別にいいさ。
そんなもんが欲しけりゃ、いくらでもくれてやる……
と。
「ん――?」
僕は思わず目を見開いた。
おかしい。
この気配は、まさか……
急いで振り返ると、背後にまたもホワイトウルフの群れ。
さっきよりは少ないものの、ざっと二十体はいるだろうか。
「どうしてだ……?」
おかしい。
さっきまでこんな気配はなかった。
可能性があるとすれば、たったいまホワイトウルフがいきなり姿を現したということだが――そんな都合のいいことがあるのだろうか。
ブラックグリズリーといいジャイアントオークといい、やはりなにかがおかしい……
いや。
待てよ。
なにかいる。
遠くの草陰から、こちらを窺っている何者かが……
僕がそちらを睨みかけると、何者かはさっと姿をくらました。逃げたようだ。
「あ? なんだよ、まだ生き残りがいたのかよ」
僕よりだいぶ遅れて、ユージェスがホワイトウルフの群れに気づく。
「はん、やっぱりアリオスごときの出番はねぇ! あんな奴ら俺様が叩き潰してくれるぜ!!」
「はい……ここは、お願いします。……いくぞ、レイ!」
「えっ、う、うん!!」
あの陰の正体は不明だが――決して逃すわけにはいかない。
ここはユージェスたちに任せて、僕たちは……!!
「おい、アリオスの奴逃げやがったぜ! 臆病者ぉー!!」
ユージェスの勝ち誇ったような声が、ずっと周囲に響いていた。
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