おい、この剣やばすぎるぞ
その日の夜。
アルトロに呼び出され、僕は冒険者ギルドを訪れていた。
剣が完成したらしい。
あまりに早すぎるが、これがアルトロが名匠と呼ばれた理由。スキル《剣の名匠・極》により、最高品質の剣を最速でつくりあげることができる。
「……これは」
アルトロから渡された剣を、僕は固唾を飲んで受け取る。
宝剣レバーティ。
アルトロが命名したその剣は、いかにも荘厳な見た目をしていた。氷のように透き通った刀身でいて、その中心部分にはブルーの細いライン。
……すごい。
柄を持った瞬間、わずかながら身体が震えたような……
シュッ、と。
僕が試しに虚空に剣を振ってみると、それだけで周囲の空間が揺らいだ気がした。
しかも一瞬だけ、斬った箇所が急激に冷えたような……
「か、かっこいい……」
レイがぼそぼそと何事かを呟く。
「ふむ。似合っておるな」
僕の様子に満足したか、アルトロがにまっと笑う。
「アリオスよ。お主の家系が剣聖なれば、儂の家系も代々《剣の名匠》でな。じゃから必然的に、マクバ家との交流は深かった」
うん。
たしかにそうだった。
父リオンは毎日のように語っていた。剣聖ともなれば、名匠の打った剣を存分に振るうことができると――
「じゃが、いつしかリオン殿は大切なものを見失ってしまった。力と名誉に溺れ、本来守るべき大切なものを……。っと、すまんすまん。老人の戯言じゃと思ってくれい」
「いえ……僕もそう思います」
いまでも覚えている。
僕に才能がないと知ったときの、父上の冷酷な表情を。
父はたしかに強い。
けど、ああはなりたくない。
「ふふ、やはり良い目をしておるな。伝承に語り継がれる初代剣聖とも通ずる」
「はは……さすがにそれは恐れ多いです」
「また良い素材が手に入ったら来るがよい。剣の名匠として、《真の剣聖》たるお主だけは特別につくってみせよう」
はは。
僕が剣聖だなんて。
それもやはり恐れ多いことだが……いまはありがたく受け入れよう。
「ありがとうございます……アルトロさん」
「うむうむ」
アルトロが満足げに頷いた、その瞬間。
「大変です! ギルドマスター!」
突如、受付嬢のエリサが部屋に駆け込んできた。
しかもただならぬ様子だ。
激しく息切れを起こし、表情も赤い。
それだけでアルトロはなにかを察したのだろう、険しい顔で問いかける。
「……状況は?」
「ホワイトウルフ大量発生です! 場所はルーレ村近辺、ただいま王都の冒険者も駆けつけてくれていますが、尋常じゃない数だそうで……!」
ルーレ村か。
ラスタール村よりさらに小さい、どちらかといえば集落みたいな場所だな。
冒険者ギルドもないし、そんなところで魔物が大量発生したら……
距離的には王都とラスタール村の中間地点。王都からも冒険者が向かっているのはそのためだろう。
「うむ。あいわかった」
アルトロはそれでも動じることなく、冷静にエリサに指示を振る。
「お主はCランク以上の冒険者に緊急依頼を要請しつつ、村人への避難誘導をせい。この村も危ないかもしれんからな」
「はい! わかりました!」
元気よく頷き、エリサが身を翻す。
「……さて、アリオスよ」
アルトロが改めて僕に目を向ける。
「お主はまだEランクじゃが……ブラックグリズリーにジャイアントオークを倒した手腕は窺っておる。この危機を、お主にも託していいかの」
「アルトロさん……」
そう。
ホワイトウルフは、昨日戦ったレッドウルフよりも少々強い。
冒険者ランクで換算すればDとなるが、なにより厄介なのは奴らのコンビネーション。ホワイトウルフの大群となると、さらに難易度が高まると言われている。
それを――僕に託そうとしてくれているんだ。
「わかりました。この剣にかけて、必ず勝ってみせます」
「わ、私も行く!」
意気揚々と気合いを入れるのはレイ。
まあ、今回の敵はジャイアントオークほど脅威じゃないからな。彼女の聖魔法は戦場でもきっと役立つだろう。
「うむ。よろしく頼んだぞ」
アルトロは嬉しそうに頷く。
「アリオスよ。父を超え世代を超え――真の剣聖となるがよい!」
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