おい、様付けするな
「ありゃ?」
おかしいぞ。
もしかしておっさん、かなり重傷じゃないか?
いやいや。でもそんなはずはない。
だって最強剣士だぞ。
これしきで倒れるわけが……
「い、痛ぇ! 痛ぇよぉぉぉぉぉお!!」
しかしながら、足下ではおっさんが依然として泣き叫んでいる。
さっきまでの威勢は微塵もない。むしろ本気で痛がっているまである。
どう見ても演技ではない。
「アリオスさん、お疲れ様です」
カヤが苦笑いとともに歩み寄ってくる。
「カ、カヤ。これは……?」
「ふふ。ごめんなさいね。実はこの人、Cランクになったばかりで。新人さんをよくいじめてたみたいで、さすがに放っておけなくなったのよ」
「そ、そうなのか……って、そうじゃなくて」
元々強い淵源流。
さらには攻撃力アップ(小)を使用しての攻撃。
Sランク冒険者ならともかく、そうでない者に対しては明らかにオーバーキルでは……
僕の杞憂を察したのか、カヤはかぶりを振る。
「ああ、心配はいらないです。実はこの人、《根性》っていうスキルを持ってまして。一日に五回までなら、強力な攻撃を受けても死なないんですよ。まあ、重傷は負いますけどね」
なんと。
それはたしかに強いスキルだな。
僕のことをやたら《外れスキル所持者》とからかってきたのも、そのあたりの優越感が原因か。
「……まあ、だからこそ調子に乗ってる節があったので。すみません、嘘をついてしまって」
「……なるほど。そうだったんですね」
まあ、図らずもボコボコにしてしまったからな。
さすがに反省してるだろう。
「ほら、しゃきっとしなさい」
カヤが厳しい表情でおっさんにポーションを飲ませる。残り少ない体力のまま放っておくのはさすがに酷だからな。
「ぷはっ……!」
数分後。
ある程度回復したらしいおっさんが、がばっと上半身を起こす。
「てめぇクソガキ! 許さねえ、ぶっ飛ばすぞ!!!」
訂正。
やっぱり反省してなかった。
「……はぁ」
カヤが呆れた表情でため息をつくが、再び険しい表情をおっさんに向ける。
「それなら、もう一度試合してみる? 戦いたいんでしょ?」
「えっ、いやそれは」
急に歯切れの悪くなるおっさん。
さきほどの攻撃を思い出したのだろう、僕と視線が合いかけるや、
「ひっ」
と情けない声を発する。
尻餅をついたまま後ずさっているから、みっともないことこの上ない。
「……いい加減、負けを認めたらいかがかしら」
そう言って歩み寄るのはレイ。
普段はちゃらんぽらんな彼女だが、怒っているときは相応の雰囲気を放つ。
その威厳ある態度になにかを察したのだろう。おっさんが目を丸くする。
「あ、あれ? おかしいな。あんた、ひょっとして……」
「気づくのが遅い」
姫は片手を腰に当て、冷たい視線でおっさんを見下ろす。
「第二皇女レイミラ・リィ・アルセウスとは私のことですわ。ところで、さきほどあなたが私に投げかけた言葉を覚えておいでですか?」
「も、もももももも……」
瞬間、おっさんはすさまじいスピードで僕たちに土下座するのだった。
「申し訳ありませんでした! レイミラ様! アリオス様!」
僕まで様付けされているのだった。
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