おい、持ち上げすぎなんだが。
あとがきに重要なお知らせがあります!
真の洞窟の最奥部には、これまた屈強な守護者が待ち構えているそうだ。
しかもかなりの強敵で、おいそれと勝てる敵ではないっぽいんだよな。
今までも大勢の挑戦者が守護者に挑んでいったものの、ついぞ勝てたという報告が上がることはなく――。
最奥部にある《真の鏡》が伝承通りの代物なのか、現時点でも信ぴょう性に欠けるところがある。
これまで僕たちが真の洞窟に訪れなかったのも、まさしくそれがため。
そんな信ぴょう性の低い場所に足を運べるほど、余裕のある日々を送れていなかったということだ。
そして。
「ガァァァァァアアア……!」
僕の目の前では、その最奥部を守護していた巨大騎士が、大きな悲鳴とともに倒れていた。
肩幅が異様に大きく、背丈も僕の二倍はあろうかという巨体ではあったけどな。
さすがに《異世界人化》による《破壊》には勝てなかったらしく、一撃で倒れていった。
「う、噂の守護者を一撃で倒すなんて……」
「アリオスお兄ちゃんなら苦戦するわけないとは思ってましたけど……」
そして僕たちの戦いを背後で見守っていたレイとエムが、揃って口をぽかんと開けている。「アリオス、頑張ってー!」と言ってレイが小岩の影に隠れようとしていたのだが、身を潜める前に決着がついてしまった形だった。
「もう、この世にアリオスに対抗できる人はいないんじゃないかしら……。異世界人の命のほうが心配になってきたわ……」
「ほんとそうです。異世界人がなんだか気の毒になってきました」
「なに言ってんだよ……おまえたち」
呆れ声を発しながら、僕は剣を鞘に収める。
「今回はたまたま敵が弱かっただけだ。油断してると痛い目に遭うぞ」
「て、敵が弱いって……。いまのはSランク冒険者でも苦戦する相手って聞いたんですけど……」
またまた悪い冗談を。
Sランク冒険者でさえ苦戦するような相手が、たった一撃で倒れるはずもない。
僕を無暗やたらと持ち上げようとしてくるあたり、レイもエムも相変わらずだよな。
「そんなことより、とっとと先に進もう。この雰囲気……もしかしたら本当に当たりかもしれないぞ」
そう言いながら、僕は改めて周囲を見渡す。
真の洞窟を一言で表すならば、それは幻想的となるだろうか。
壁面や地面には様々な鉱物があり、その石がどこからともなく漏れてきた光に乱反射しては、色彩さまざまな色を作りだしている。
それはある意味とても美しい光景で、僕たちもしばらくはその光に見惚れていたものだ。
――そう。
この先の通路を進めば、本当に何事をも見通す《真の鏡》に出会えるのではないか。
そんな思いが強くなっていくほどに。
しかしもちろん、ここは気を抜ける場所ではない。
いまの守護者を筆頭として、他にも強そうな魔物がうじゃうじゃいるからな。油断して怪我でもしてしまったら元も子もない。
と。
――……さらばだ。我が息子――アリオスよ。
「…………っ」
ふいに聞き覚えのある声が脳内に響きわたり、僕は思わず足を止めてしまった。
「あれ? アリオス、どうしたの?」
「い、いや……。なんでもない……」
気のせいか。
レイにもエムにも聞こえていないっぽいしな。
しかしいまのやや切なそうな声は、思いがけずあいつに似ていたが――まさかな。
そんなことを思いつつ、僕は思わず歩く速度を上げてしまうのだった。
本日9/30、本作のコミカライズが発売します!
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