おい、都市伝説じゃないのかよ
本日、本作チートコード操作4巻が発売されています!
番外編もついておりまして、こちらではリオンの過去がうっすら語られています。
どうぞお読みください……!
さて。
重鎮会議も終わったことだし、僕たちには行きたい場所があった。
――真の洞窟。
旧くから王国に伝わる場所で、最奥部にある鏡にまで辿り着けば、その人が知りたい真実を映し出してくれるのだとか。
誰かの本心であったり、誰も知らない歴史の裏側だったり……
今回でいうと、僕たちはリオンやフェミア、そしてヴァルガンド帝国の動きをなんとしても知りたいからな。
もしそういった鏡があるのなら、ぜひとも訪問したいところだ。
「もちろん、鏡はなんでも映してくれるわけじゃないけどね」
ともに王城の廊下を歩きながら、隣のレイがそう言った。
「私欲にまみれた人とか、自分のためだけに真実を知りたい人とか……。そんな人に対しては、鏡もなにも映さないみたい」
「そ、そうか……」
なんとも都市伝説めいた話だよな。
だからにわかには信じがたいし、正直なことを言えば、すこし気が乗らないのも事実だ。
こんなことをしている間にも、異世界人がなにを企んでいるかわからないわけだしな。
ただウィーンにも聞いてみたところ、なんとそれは《女神の遺した神具》であるらしく。
一度その場所に訪れてみるのは、決して悪くないのではないかと提案されたのだった。
――女神ディエス。
これまで何度も助けてくれた彼女のことも、本音を言えば気がかりではある。
特に先のミルアとの戦いでは、オルガントやファルアスは手を貸してくれなかった。
――異世界人の気配を感じたら、自分たちも訪れる――
オルガントがそう言ってくれたはずなのに、あのときは現れてくれなかったのだ。
これまで手を貸してくれていた先祖たちにも、なにかしらの変化が訪れている……
そう考えると、どうしても女神が遺したという神具には惹かれてしまうのだった。
「あ……あの……!」
そんな話をしていると、ふいに背後から話しかけられた。
「真の洞窟、私も行きたいです……!」
そう言ってきたのは、第零師団の代表――エム。
かつてアルド家に奴隷として虐げられていた少女で、その後は僕との縁があって自立。以後は第零師団の代表として、多くの人造人間を導いてくれている。
「わ、私も知りたいこといっぱいあります。どうか一緒に連れていってくれませんか……⁉」
「エム……」
いまの話を聞いていたのだろう。
彼女はすがるように僕たちを見つめていた。
「もちろん、師団長の仕事はアンちゃんとかに引き継ぎます! だから……」
「はは……。大丈夫さ、そんなに畏まらなくても」
僕はエムのもとに歩み寄ると、彼女の頭を優しく撫でてみせた。
「そうだな。エムにも知りたいことはいっぱいあるだろうし……。一緒に行くか」
「あ……いいんですか?」
「ああ、もちろんさ」
エム。
彼女の見た目は人間のそれと変わりないが、その実、人間ではない。
人造人間――
アルセウス救済党によって創られた存在であり、その出生などはなにもわかっていない。
彼女たちを創っていたマヌーザやレイファーでさえも、結局は異世界人たちに動かされていただけだしな。
まさしく産みの親にさえも、人造人間を創った理由がわかっていないのだ。
だから彼女の気持ちはよくわかる。
自分の生まれた理由を知りたいというのは、きっと切実な気持ちだから。
「よし――それじゃあ準備が整い次第、真の洞窟に向かおう。それでいいか?」
「うん!」
「はいっ!」
レイとアンの元気な返事が重なるのだった。
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