おい、なんかすごい力だぞこれは
国王――
オルガント・ディア・アルセウス。
初代剣聖――
ファルアス・マクバ。
二人はしばらく歓談を満喫していたが、その数分後、ファルアスがやや重い表情で言った。
「それで、どうなのですか陛下。進捗のほどは」
よほど親しい関係なのだろう。
国王たるオルガントに対して、ファルアスは臆している様子がない。
「ふむ……いや。厳しい状況と言わざるをえんな」
オルガントは顎髭をさすりながら答える。
「やはり次世代の若者に託すしかないだろう。《転生魔法》はまだ我々には荷が重い」
「そうですか……仕方ないですな」
ふうとため息をつくファルアス。
「とはいえ、託す者を間違えれば世界は破滅に導かれてしまう。この力を受け渡すのは、誠実で強かな者がいいでしょうな」
「そうだな……そのような者が現れればよいが」
オルガントは瞳を閉じると、なにもない空間に向けて呟いた。
「――それでよいな? 女神よ」
その瞬間。
僕の視界は暗転した。
★
「……あ」
いつの間にか元の場所に戻っていたようだ。
暖かな風。
のどかな虫の鳴き声。
見覚えのあるラスタール村の光景が、視界いっぱいに広がっていた。
戻ってきたようだ。元の世界に。
「なんだったんだ、いまの……」
ただの夢とは思えない。
オルガントもファルアスも、写真で見たのとそっくり。いや――同じだった。
意味がわからない。
なんだったんだいまのは。
――――――
完了。完了。
初代剣聖ファルアス・マクバから剣聖の意思が引き継がれています。
受け取りますか?
――――――
「剣聖の意思……?」
なんだ。
よくわからないが、拒否することもない。僕は思い切って「受け取る」と心中で唱える。
と――
――――――
確認。確認。
淵源流・一ノ型を習得しました。
――――――
瞬間、ほのかな煌めきが僕を包み込む。
暖かくて、それでいて懐かしいような……
――ああ。これは。
そうか。
これがマクバ流の原点にして最強の流派。
剣聖として名高いマクバ家が、代々からずっと守ってきた誇り高き剣の源……
「…………」
光が失せる頃には、僕は新たな境地に達していた。
いま、僕の身になにが起こったのか。なんとなくそれがわかる気がする。
「…………」
僕は瞳を閉じ。
静かに意識を研ぎ澄まし。
「はっ――――――!」
勢いよく剣を鞘から抜く。
――轟!!
遠くにあったはずの大きな木が、一瞬にして両断された。