表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

179/188

全人類奴隷化計画

 ――ヴァルガンド帝国。


 今一度おさらいしておくと、はるか昔の時代において、アルセウス王国を統治していた大国だ。


 その統治に異を唱えたのが、初代国王たるオルガント・ディア・アルセウス。そして初代剣聖たるファルアス・マクバだ。


 突如《独立宣言》を発表したオルガントに、むろん帝国が黙っているわけがなく。

 世界全土をも巻き込む大戦争が沸き起こったのが……約二千年前。


 当時の《アルセウス王国》は規模も小さかったが、オルガントとファルアスの大活躍によって、戦況を大きく覆していった。

 ファルアスに「たったひとりで大軍を壊滅させる」という逸話がつけられたのも、この戦争が名残だ。


 両国が疲弊に苦しみだしたタイミングで、オルガントが不戦条約をつきつけ――


 現在の両国は、表向き・・・は良好な関係を築いている。


「お、おいおい……これは……!!」


 そのヴァルガンド帝国内において、実に見覚えのある光景が広がっているのだ。


 闇色のオーラに呑み込まれた冒険者たちが、一般市民に攻撃を加えている……その地獄絵図が。


「ま、まさか……。そういうことか……!」


 いち早く“なにか”に気づいたんだろう。

 レイファーが目を見開き、真っ青な表情で立ち尽くしている。


「ア、アリオス君……。あの冒険者たちはおそらく、アルセウス王国の出身者だ。我が国の冒険者だけが、ヴァルガンド帝国を襲っている……!!」


「な、なんだって……!?」


 さすがに大声を発してしまう僕。


 ――そう。

 冒険者ギルドそのものは、別の中立国に拠点を構える組織だ。


 国籍にとらわれず多くの人々が在籍しているため、政治的なしがらみにとらわれることはない。言い換えればそれは、アルセウス王国出身の冒険者が、ヴァルガンド帝国に身を置くこともできるということ。


 ただでさえ微妙な関係が続いている両国に、こんな決定的な大事件が起きてしまったら……!


「「緊急放送。緊急放送」」


 と。

 帝国を映す白いモヤから、事務的な音声が響きわたってきた。


 どうやらヴァルガンド帝国全域に音声を鳴らしているようだ。


『我が善良なる帝国市民たちよ。第144代皇帝、スヴァルト・クローフィである。現在、私のもとに信じがたい凶報がいくつも届いている。あろうことか、かの隣国――アルセウス王国に籍を置く冒険者たちが、罪もなき帝国民をなぶり殺しにしていると……!』


「くっ……!」


 僕は思わず歯噛みしてしまう。


 現皇帝……スヴァルト・クローフィ。

 レイから何度かその名を聞いたことがあるが、なかなか抜け目のない人物だと聞いている。冷徹にして残忍、自身の家族でさえ政局の駒にしてしまう、要注意人物であると。


『かの国は元より《我が国の一部》でありながら、愚かしくも独立宣言を主張した。我らの先祖が長きにわたって《安定した生活》を提供していたものを放棄し、かの冷徹な戦争へと発展せしめたのである!!』


『諸君、これを許していいのか!?』


『かの国は我が国への恩を忘れるに留まらず、非人道的な暴力行為まで行っている!』


『世界を代表するヴァルムンド帝国が、かの国の横暴を許していいのだろうか!?』


『我が善良なる帝国市民たちよ! 今一度、その清き心に問いかけてみよ!!』


 その瞬間。

 さっきまで逃げ惑っていた人々に、見覚えのある闇色のオーラが発生した。


 ――考えるまでもない。

 理性を崩壊させ、人の意識を思うままに操る……影石のオーラだ。


「そ、そうだ……」

「俺たちは善良な帝国民……逃げる必要なんてない、戦えばいいんだ……!」

「殺せ! アルセウス王国の人間は、みんな殺せ!!」


 そこからの惨劇は……正直、見たくもない。


 アルセウス王国の冒険者たちは、訳もわからない奇声を発して暴れまわり。

 それに乗じて、ヴァルムンド帝国の住民たちも反撃をして。


 互いが異世界人の操り人形と化して――見るに堪えない戦いを繰り広げていた。


『そう! それでいいのである!』


『我が国を侵略する外道者は、遠慮なく叩き潰すのだ!』


『もちろんこれは虐殺ではない! 自己を守り隣人を守り国を守る……正当な戦いなのである!』


「くそっ……!」


 ――全人類奴隷化計画。

 まさしく言い得て妙な、最悪の計画だった。


「これが……おまえたちの狙いだったのかよ!」


 はるかなる高みに浮かんでいるミルアとリオンに、僕は大声で叫んだ。


「世界を奴隷化して戦争を引き起こして……そんなことをして、なにが楽しいんだ!?」


「うふふ。残念ながら、マスター・・・・の考えは私たちにはわからないわ♡」


 僕の問いかけにも、ミルアは変わらず妖艶に笑うのみ。


「願わくは、王国の皆さんの苦しむ姿も見たかったものだけど……。まあいいわ。私たちの計画に……寸分の狂いもないのだから」


「ぐ…………!」


「……そう怒るな、アリオスよ」

 拳を握り締める僕に向けて、リオンがやけに落ち着き払った声を発した。

「おまえの剣は、すでに剣聖の域を超えている。ここで準元帥の名を拝命したことも……きっと、なんらかの運命であろう」


「リオン……! あんた……!」


「…………」


「ふふ、リオンさん♡ あなたも大概、かなりの親ばかですわね? わざわざ橋を壊したのは、アリオスちゃんが私の餌食になるのを避けるためじゃなくて?」


「……ふん。知らぬな」


「うふ。まあ……いいでしょう」


 ミルアはそこで小さく笑い。


 パチン、と。

 右手の指をならしてみせた。


 その瞬間、ミルアとリオンの身体が新緑色の輝きに包まれる。


 ――転移魔法だ。


「待て!! ミルア!」


 と。


 さっきまで他の冒険者たちと戦っていたダリアが、息せききってこちらに走り寄ってきた。


「う、嘘だろう!! おまえが本当に事件の黒幕で……私たち冒険者を、裏で操ってたっていうのか!?」


「ふふふ。ダリアちゃん。あなたのその純情な心が……わたくし、心から大好きでしたわ♡」


「なっ……」


「それではみなさん。ご機嫌よーう♡」


 そう言い残して、ミルアとリオンは、完全にこの場から姿を消した。

【※ お礼 ※】


本作の3巻が、売上好調とのことです……!

お買い上げくださったみなさん、本当にありがとうございました!


秋葉原の大型店でも品薄になってきてるみたいなので、

どうぞ今のうちに、アマゾンでもリアル書店でも、ご購入いただけますと幸いです(ノシ 'ω')ノシ バンバン


※作品紹介ページは下にあります!


よろしくお願いします!(ノシ 'ω')ノシ バンバン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 「コミカライズ一巻」が【 2022年9月30日 】に発売されます! 下記の画像クリックで書報ページに飛べますので、ぜひ今のうちに予約してくださいますと幸いです!▼ 明日9/30、チートコード操作のコミカライズ一巻が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下の画像クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ