レイファーの決意
ダドリーだけのユニークスキル――《白銀の剣聖》。
その輝きを見て、リオンは苦笑いを浮かべる。
「ふふ……そうか、なるほどな。心の正しき者が使える、破邪顕正の剣。おまえはもう、その高みに昇りつめたわけか……」
「ま、そういうこった。色々あったけどな」
圧倒的な実力を身につけてもなお、ダドリーに驕り高ぶっている様子はない。
ただただ真っすぐにリオンを見据えるその姿は、まさしく《剣聖》と呼んでも遜色なかった。
「本気出してくれ、リオンさん。俺はもう……昔の俺じゃねえんだ」
「…………」
ダドリーのその言葉に、リオンは数秒だけ黙りこくると。
「…………よかろう」
ごく小さな声で、それだけを呟いた。
「いまのおまえは……もはや我が弟子ではない。マクバ流を極めた一人の剣士として……全力で当たらせてもらうぞ!」
そして剣を正中線に構え、大きな雄叫びをあげていく。
たったそれだけで……周囲が激しく振動した。
家が揺れ。
木々が揺れ。
さらにはリオンを中心に突風までも発生し、近くの瓦礫を丸ごと吹き飛ばしていった。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
だが、リオンの勢いはまだまだ止まらない。
ついには、彼の近くにあった木々や建造物から崩壊していく始末だ。
「ば、馬鹿な……!!」
襲いくる突風を両腕で受け止めながら、レイファーは戦慄していた。
あれが……伝説の剣士、リオン・マクバの実力か。
アリオスやミルアも“人外の戦い”を繰り広げているが、正直、二人の戦いといい勝負だぞ。
「私は……あんな化け物と戦おうとしていたのか……」
思わずそう呟いてしまう。
それだけ、いまのリオンの力は圧倒的だった。
「ふぅぅぅぅぅぅうう……!」
数秒後……嵐が収まった頃には、未曽有の怪物がそこにいた。
見るも禍々しい《闇色のオーラ》は、周囲の建造物さえ飲み込みかねないほどに巨大。
剣の修行をしていない者であれば、恐れをなして逃げ出してしまう可能性さえある。
まさに剣聖……
最強のマクバ家の名に恥じない、恐るべき剣士がそこにいた。
「ぐっ……。マ、マジかよ……」
さしものダドリーも、これには驚かざるをえないようだ。
懸命にリオンと対峙しているが――その両足が、わずかながら震えてしまっている。
「立ち止まるな! ダドリー!!」
そんな彼に、リオンが大声で喝を入れる。
「言っただろう! 剣を持たば雑念を捨てよ! 常に己が瞳で相手を見ろ!」
「…………っ」
ダドリーはそこで下唇を噛むと。
「リオンさん……俺、わかんねえよ! なんで……なんで、そこまでの境地に立ってるあんたが、異世界人なんかに手を貸すんだ!!」
「知りたくば剣で問うてみよ! 言っておくが、かつての弟子だからといって手加減はせんぞ!!」
「ぐ……」
なんだろう。
リオンが一瞬だけ泣いているように見えたのは……レイファーの気のせいだろうか。
「この……大馬鹿野郎がぁ――――!!」
絶叫をあげ、ダドリーがリオンに突っ込んでいく。
そのスピードはさすがの一言。
先ほどとは比較にならない速度をもって、一瞬でリオンとの距離を詰めた。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!」
その実力差は……やはり、リオンのほうが一枚上手か。
両者ともにすさまじい剣撃を繰り広げているが、少しずつダドリーの動きが鈍りつつある。
リオンの立ち回りには無駄がなく、それによってスタミナを維持することができているのだろう。
――ひるがえせば、いまが絶好の攻撃チャンス。
この隙にリオンに巨大な魔法をぶち当てれば、それだけで一気に有利になるはずだ。
もしくは《聖魔法》を使用し、ダドリーの体力を回復するだけでも……戦況は一変するだろう。
実に合理的。
いまこの場で勝利を収めるには、最も間違いのない戦い方といえるだろう。
だから現在、レイファーは右手を突き出していた。
「…………」
だが。
――俺だって、一度サシでリオンさんと戦ってみたかった。修行とか師弟とかいっさい関係なく……ただただ、ひとりの剣士としてな――
そんな“合理的な勝ち方”を、ダドリーは望むだろうか?
「はは……。甘くなったものだな、私も……」
苦笑を浮かべながら、レイファーは魔法を発動しようとした手を……ゆっくり降ろしてみせた。
「……見守っているよ、ダドリー君。もしものときは私が守ってみせよう。この命に代えてもね」
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