決戦①
本文下に大事なお知らせがあります!
元剣聖リオン・マクバ。
詳しい経緯はわかりかねるが、彼は相当に強くなったようだ。元剣聖である実力に加えて、さらに異世界人としての力も加わったような……
とにもかくにも、レイファーの知る“剣聖”とは程遠い、まるで異次元のごとき強さを誇っている。
影石による強化がなくなった以上、レイファーには決して届かぬ相手ではあるが……
「それでも……届かせてもらおう。王族としての地位は失ってしまったが、王族の誇りまでは捨てていない……!!」
「……それでは、容赦なく行かせていただきますぞ。レイファー殿下」
リオンが野太い声を発した……次の瞬間。
リオンの姿が、文字通り消えた。
そして瞬きを終えた頃には、なんとすぐ目前にまで迫ってきているではないか。
「くっ……!」
レイファーは舌打ちをかまし、慌てて防御の構えを取る。自身の剣を掲げることによって、リオンの剣を防ごうとする。
だがその行動すらも――元剣聖は先読みしていたらしい。
リオンは剣による攻撃を行うのではなく……空いた左手で、レイファーの腹部を思い切り殴打した。
ぐにゅ、と。
「ぐ、ほぉあ……!」
あまりにも重い一撃に、レイファーは情けない悲鳴をあげてしまう。
「これで終わりとは言わせませんぞ」
さらにもう一発。
ゴキッ、と。
レイファーは顎下に強烈なアッパーを仕掛けられ、呆気なく吹き飛んでしまう。もし途中で民家の壁にぶつかることがなければ、何十キロと飛ばれされていたかわからない。
「くぅうう……!」
薄れゆく意識を必死で繋ぎ止め、レイファーはなんとか起き上がってみせる。
「は……ははは。さすがに予想外だったね……。まさか、これほどまでとは……」
対するリオンのほうは、当たり前だがまだまだ余力を残しているようだ。足をふらつかせているレイファーに、少しずつ歩を進めてきている。
わかりきっていたことではあるが――剣では絶対に勝てない。
レイファーも剣には自信があるものの、相手は剣聖。剣での勝負に持ち込むのは、さすがに分が悪いというものか。
「それならそれで……いくらでもやりようはある……!」
レイファーは右手を前方に突き出すと、体内に巡る魔力をその右手に集中させた。スキル《叡智》にかかれば、一度見た魔法はすべて使いこなすことができる。
つまり、かつてアリオスがよく使っていた、あの魔法さえも――
「中級魔法発動……フレアゾーン!」
レイファーがそう唱えると、突如として、リオンの周囲に大きな火球が出現した。
しかもその火球はひとつではなく、二つ、三つ……数えるもおぞましいほどの火球が、リオンを取り囲んでいるのである。
「なるほど……剣が駄目なら魔法で戦う。極めて妥当な、殿下らしい戦い方と言えましょう」
だがリオンは、それら無数の火球に囲まれても意に介さない。
「しかし残念ながら……私にその常識は通用しない……!」
ぬん! と。
リオンは大きな雄叫びをあげると、自身から漆黒のオーラを出現させた。例によって影石によく似た、非常に禍々しいオーラである。
「な……!」
その後起こった現象に……レイファーは目を見開いたまま立ち尽くしてしまった。
せっかく展開したはずの火球たちが、闇色のオーラに呑み込まれて消滅してしまったからだ。
「ば、馬鹿な……」
剣も通用しない。魔法も通用しない。
そんな化け物相手に、どう戦えというのだろうか。
――いや。
まだなにかしらの方法は残っているはず。
考えろ、考えろ、考えろ……!!
「ふ。彼我の戦力差を知ってもなお、諦めることのない精神力の強さ……。異世界人たちが、なぜ真っ先に殿下に目をつけたのか……わかった気がしますよ」
「く……」
「ですがそんな殿下でさえ、私たちにとっては単なる傀儡でしかなかった。残念ながら、これが事実なのですよ」
そう言いながら、コツコツと歩み寄ってくるリオン・マクバ。
まさに威風堂々――
迷いのない一歩一歩を踏み進め、レイファーの手前に来たところで、空高く剣を掲げた。
「ご安心ください。あなたが望んでいた《理想の国》は、私たちで創り上げておきましょう。もちろん――そのときにはあなたは亡き者になっているでしょうがね」
「ぐ……!」
駄目だ。
さっき大きく吹き飛ばされたことが、想像以上に強烈なダメージとなっているらしい。
トドメを刺そうとしてくるリオンに対し、レイファーは一歩たりとて動くことができない……!
――私は、ここまでなのか……
――すまない、レイミラにアリオス君……
――私ごときの軟弱者では、贖罪すらままならぬようだ……
レイファーがゆっくり目を閉じた、その瞬間。
「やっと見つけたぜ……! リオンさん!!」
どこからともなく聞こえた声に、レイファーは目を見開いた。
「き、君は……!!」
「ふん。おまえか……」
目を見開くレイファーに、やや暗い表情で吐き捨てるリオン・マクバ。
――そう。
この土壇場に駆けつけたのは、かつてレイファーが謀略によって陥れた人物――ダドリー・クレイスだった。
【※ 大事なお知らせ ※】
おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが。
こちらの3巻について、「1/30に発売」とお伝えしていましたが、正しくは【1/28】、つまり【今日が発売日】です!
作者も正しく把握しておらず、びっくりしました……(ノシ 'ω')ノシ バンバン
各通販サイトでもランキング1位を取ってますので、品切れにならない今のうちに、ぜひともご購入をお願いします(ノシ 'ω')ノシ バンバン
あ、もちろん、吐くくらいの気持ちで書いたので、web版よりめちゃ面白くなってます!
よろしくお願いします!(ノシ 'ω')ノシ バンバン