事件の裏側で
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一方その頃。
アルセウス王国、王城にて。
「ふぅあああ……!」
王太女レイミラ・リィ・アルセウスは、座った姿勢で上半身だけを思いっきり伸ばした。
――疲れた。
やはり座りっぱなしの仕事は自分には合わない。
できれば外に出て動き回りたいくらいだが――立場上、そうもいかないのが実情だ。
実際、目の前には書類の山が堆く積まれている。
別に急ぎの案件ではないのだが、できるだけ目を通しておきたいところだ。次期女王たる者、こんなところで挫けてはいられない。
それに……約束したではないか。
彼と二人で、アルセウス王国を守るって。
それを思えば、多少の苦労はどうってことない。彼と笑顔で過ごすことが、自分にとってなによりの喜びなのだから。
「ふふふ……落ち着いたらアリオスとあんなことやこんなことを……」
「――ラ様。レイミラ様?」
「わわっ!」
レイは大きく跳ね上がり、思わず椅子からずっこけそうになった。
顔をそちらに向けると、そこには30代ほどの女性兵士がいた。
ミラー・カミロ。
レイの私室を護衛している兵士だ。
「ご、ごめんごめん。考え事してて。あはは……」
「いえいえ……レイミラ様の頑張りは、この私がよく存じておりますから」
「う、うん……ありがと」
実はアリオスのことしか考えていなかったのだが……
そこには触れないでおく。
「それで……どうしたの? なにか用があるんでしょ?」
「ええ。たったいま、部下から情報が届きまして。――アルセウス救済党の残党が、再び現れたそうです」
「え……⁉ また……⁉」
「ええ。無事冒険者によって拘束されたそうですが、ここのところ立て続けですね……」
「うん……そうね……」
思わずため息をついてしまうレイ。
つい先日も同じことがあったばかりなのに、またアルセウス救済党が襲い掛かってくるとは。
党首が拘束されたことで、構成員たちも混乱しているんだろう。
報告によると、党首マヌーザはかなり神格化されていたようだし……
次のトップを作ろうだなんて、考えてもいないのかもしれない。
「それで、構成員たちはなんて言ってるの?」
「いえ……それがまた、《党首を返せ》だの《王国を救済するのは我らだ》だの……。先日に捕縛された構成員と同じことしか言っておりません」
「そっか……」
まったくもって常軌を逸している。
正直、理解に苦しむところだ。
だが――アルセウス救済党もまた、異世界人による被害者ともいえる。
レイファー第一王子や党首マヌーザは、同志Aによって意識を操作され、理由もわからぬままにアウト・アヴニールを開発していた。
――その行動が、アルセウス王国の救済になると信じ込まされて。
もちろんそれで過去の罪が清算されるわけではないが、被害者であることは事実だろう。
「ねえ。ひとつ、お願いがあるんだけど」
「はい。なんでしょうか」
「その残党と話をしたいの。いいかな?」
「な……⁉ レイミラ様みずからがですか⁉」
「うん。それから、もうひとつお願いがあってね……」
★
王都から馬車で1時間ほど離れた、ダイレース拘置所。
ここに、アルセウス救済党が拘束されているという。
監視員はもちろんのこと、ここには精鋭の軍人が配置されているとのこと。
万一のトラブルが起こった際にでも、柔軟な対応ができるのだ。
「レ、レイミラ王女殿下……!」
「なんと麗しき……!」
見張りの軍人が一斉に姿勢を正す。
レイはそんな彼らに手を振って応じつつ、ミラーに案内されるままに先に進んでいく。
いままでアリオスとともに修羅場をくぐり抜けてきたとはいえ、拘置所の物々しい雰囲気はやっぱり慣れなかった。このへんも含め、自分の課題といったところだろう。
「それにしてもレイミラ様……。随分、大胆なことを決断されましたね」
道中、先を案内するミラーがそう告げてきた。
顔には苦笑いを浮かべている。
「そう? やっぱり思い切りすぎたかな?」
「いえいえ、素晴らしいと思います。やはりレイミラ様のようなお方が、今後の王国には必要なのかと」
「あはは……。だといいんだけどね」
私がそこまでの人物になれるのか、甚だ疑問だけれど。
それでも、一度決めたからにはきちんとやり遂げたい。
女王となって、国を正しき方向に導くという役目を――
「つきました。こちらでございます」
そして、数分後――
とある一室の前で、ミラーが足を止めた。
頑丈そうな鉄の扉に……これは防御魔法だろうか? 物理的な鍵とはまた別に、脱走しないように防御魔法が展開されているようだ。
なるほど……
いかに凄腕のアルセウス救済党といえど、これでは逃げる余地がないだろう。
「それでは……開けますね」
ミラーはまず懐から鍵を取り出し、開錠。
その後に魔道具を手に取るや、扉の上部にかざした。それによって扉全体がほのかな緑色に包まれ、《防御魔法》が解除される。
「念のため、構成員には魔力制御の腕輪をつけさせております。ですので万一のことはないと思いますが……危険を感じたら、すぐにお逃げくださいね。……まあ、レイミラ王女殿下ほどの達人には必要ないかもしれませんが」
「うん、わかった。ありがとう」
かつてアリオスに修行をつけてもらったし、そう簡単にやられるつもりはないけれど。
それでも、最悪の過激派組織として恐れられたアルセウス救済党との対面――
そこにすこしばかり、緊張してしまうのだった。
「な……!」
扉を開けた瞬間、構成員が驚きの声をあげた。
――ゲーガ・ロ―バレス。
その構成員の名を、レイはそう聞いている。
幹部とは言わないまでも、党内でそこそこの地位についていたらしい。レイファーやマヌーザに絶対的な忠誠を誓っていたことから、構成員の間でも信頼されていたとか。
そのゲーガは現在、鉄製の椅子に座らされている。
固い紐で手足を拘束され、両腕には前述の《魔力制御の腕輪》。
さすがにこの状況では逃走どころの話ではないだろう。《影石》でもあれば話は別だが、それももちろん回収済だ。
「ふん。王女殿下みずからがご登場か。さすがに驚いたよ」
ゲーガは苦笑いを浮かべながら言い放つ。
「……だが、残念だったな。俺は有益な情報を持っていない。拷問しても得られるものはないぞ」
「……ま、そう警戒しないでよ。別に痛めつけにきたわけじゃないわ」
レイは近くの壁にもたれかかると、改めてゲーガに向き直った。
「あなたたち、すごいじゃない。この後に及んでテロ起こすなんて……ちょっと、信じられないというか」
「ふん。なんだ。ただ馬鹿にしにきたのか、お姫様」
ゲーガの顔に自嘲めいた笑みが浮かぶ。
「違うってば。勝てるわけないのにテロを起こしたってことは――つまり、あなたたちには身の安全を擲ってでも守りたい信念がある。……違う?」
「…………」
「それがすごいと思ったの。普通にできることじゃないわ。あなたたちの信念は――本物だと思う」
「…………くく、ははは。はーっはっは!」
そこでゲーガは大きく両肩を揺らしだした。
「うまいじゃないかレイミラ王女殿下。さすがは次期女王様といったところかな」
「うん。それはどうも」
レイは静かにその賞賛を受け止め、ゲーガの回答を促した。
「で、どうなの? あたらずしも遠からずじゃない?」
「……ふん。まあ、おおむねその通りだ。我々は、我々の信念に基づいて動いている。それはいまも昔も変わらない」
「やっぱりね。――古き良きアルセウス王国を取り戻す……それが、あなたたちの信念だよね」
「しかり。大多数の国民は、己の利ばかりを優先し、他者や風土を重んじる心をなくしてしまった。そんな現状は……絶対に間違っている」
「…………」
そう言われると、レイはどうしても想像せずにはいられないのだ。
外れスキルだからというだけで、実の息子を追い出した剣聖リオン・マクバ。
そしてその悪評に乗っかるように、途端にアリオスを迫害し始めた住民たち。
もちろん、これはアリオスだけの話じゃない。
王国中で、似たようなことは起こっている。
特に《外れスキル所持者》に対して、この国の住民は異様に冷たい。
「だから、あなたたちが変えたいっていうの? この世界を」
「当たり前だろう! こんな薄汚れた世界を……誰が美しいと思うものか!」
「――なるほど。固く素晴らしい信念だ、ゲーガ」
そしてふいに現れた人物に。
「な……ななな……! まさかあなたは……⁉」
ゲーガは大きく目を見開いた。
身体を震わせ、激しく慄いている。
「レ、レイファー殿下……! あなたが、なぜここに……⁉」
「……なにを言う。いまや私は大罪人。王族を名乗る資格はないよ」
囚人服をまとった、長身痩躯の青年。
第一王子、レイファー・フォ・アルセウスは、苦笑を浮かべながらそう言った。
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