おい、びっくりするくらい態度が変わってるんだが
2巻の発売まで【あと3日】です!
ぜひご予約のほど、お願い致します!
――終わった。
剣士Fはいずこへと消え失せ、周囲から敵の気配はなくなった。
「あとは……これを解除すれば解決か……」
祭壇の上では、いまも影石が怪しげな輝きを放っている。
これを野放しにしていては、またなにが起こるかわからないからな。
僕は祭壇にまで歩み寄ると、影石にそっと触れた。
途端。
シュウウウウウウ……という音を発しながら、影石が徐々に輝きをなくしていく。
周囲に満ちていた面妖な気配が、少しずつ浄化されていく。
「こ、これは……」
カーナが驚きの声を発したときには、旧校舎は静謐な空気に包まれていた。
さっきまでの重苦しい空気とはまるで逆、穏やかで、どこか懐かしい雰囲気さえ感じられる。
僕はこの学園に通ってはいないが、きっと多くの学生がここで苦楽をともにしたんだろう……そんな光景が、ありありと浮かんでくるのだった。
「なんと……これは、どうなってるんだ……」
カーナはいまの現象がまるで信じられないらしく、ずっと目を丸くしたままだ。
「なるほど。エムさんからお聞きした通りですね」
一方のアンは得心したように頷いていた。
「影石に触れただけで、その効果を消すことができる……。たしか、女神様の血が流れているんでしたっけ?」
「な、なんと……!」
カーナがさらに目を丸くした。
「信じられない……。このような世界があったとは……!」
まあ、それも無理ないだろう。
影石だの異世界人だの、普通は聞き慣れない言葉だからな。
ずっと軍人として働いてきたカーナでさえ、未知の世界に感じられるはずだ。
「…………」
だが事ここに及んで、悠長なことは言っていられない。
謎の不審人物、剣士F……
あいつが残した情報は、あまりに意味深すぎた。
「カーナ。ここ最近、ヴァルガンド帝国が不穏な動きを見せてはいないか?」
「…………」
カーナは数秒だけ黙りこくると。
「……はい。思い当たる節はあります」
重苦しい顔で頷いた。
「まだそこまで目立った動きはしていませんが、不審な報告はいくつか上がってます。よろしければ、後日、改めて詳しい資料をお渡ししましょうか?」
「ああ……ぜひお願いしたい」
もし帝国までも絡んでくるのだとしたら、このまま放っておくわけにいかないからな。
幸いにして、いまの僕は準元帥。
他国の状況を把握しやすい立場にある。
そう考えこんでいると、アンがふいに口を開いた。
「アリオス様。さっきの人、他にも変なこと言ってませんでした? 王国各地で異星人の手が及んでいるとかなんとか……」
「ああ……それも気になるところだ」
なんにせよ、ポージ旧校舎の謎は一息ついた。
あとはゆっくり休みつつ、状況の整理を行いたい。
色々なことがあったからな。
「……とりあえず、いったん町に戻ろう。ちょっと疲れたしな」
「サンセーイ! ワタシ、ソロソロ肌ノオ手入レヲシナクテハ」
「そ、そうか……」
やはりボケることも忘れないウィーンだった。
★
「お……あんたたちは……」
数分後。
港町ポージに戻った僕たちを、見覚えのある女性が出迎えてくれた。
ダリア・ニールセン――
さっき旧校舎に訪れていた赤毛冒険者だ。
もう一人いた冒険者――ミルアはいないから、彼女と別れた後、改めてここに来たんだろう。
「ダリアさん。……まさか、迎えにきてくれたんですか?」
「ま、そんなところだ。このままあんたたちが死んだりしちゃ、さすがに目覚めが悪いからな」
「なんと……」
カーナも驚いている。
さっきまではあんなに突っかかってきたのに、驚きの変わり身だ。
それだけ、あのジャイアントオークの群れが堪えたのかもしれないな。
ダリアは僕たち一同をぐるっと見渡すと、改めて言った。
「で……あの不審者はどうなった? なかにいたのか?」
「えっと……」
正直に答えるべきか悩んだが、ここで隠し事をするのは得策ではあるまい。できることなら、ここの冒険者ともなるべく連携を取りたいしね。
そう判断した僕は、カーナと目配せしつつ、これまでの経緯を話した。
異世界人や影石のことも、すべて――だ。
「…………」
ダリアはしばらく驚いたように目を見開いていたが。
「そうか……。そういうことになってたとはな……」
と掠れる声で呟いた。
「ええ。再び旧校舎に魔物が沸くことはないはずですが……剣士Fに関しては、また現れるともわかりません。警戒だけは怠らないでもらえると」
「……了解。まあ、あのジャイアントオークの群れを出現させるような奴だ。そいつ相手に無傷で帰ってきただけでも、立派な功績だろうよ」
「はは……そう言ってもらえると助かります」
本当に、びっくりするくらい態度が丸くなったな……
「ところでダリアさん。あの……ミルアさんって方はどうなりました? 穏やかな顔をしてたので、大丈夫だとは思いますが……」
「ああ……ミルアか……」
途端、ダリアの表情が暗みを帯びた。
「まだ意識が戻ってないんだ。命に別状はないらしいし、そのうち目を覚ますと思うが……」
「そうですか……ちょっと気がかりですね……」
ハイエリクサーを飲んでもなお意識が戻らないのか……
大丈夫だとは思うが、たしかに心配だな……
「わかりました。そのうち、お見舞いに行ってもいいですか?」
「もちろんだ。そのほうがミルアも喜ぶだろう」
「はは……ありがとうございます」
僕は改めてぺこりと頭を下げると。
みんなを連れて、宿のある方向へ歩き出す。
と。
「アリオス! カーナも!」
もう遠い位置にいるダリアが、手を振りながら大声を張った。
「あんたらのこと《目障り》って言ったけど、撤回させてくれ――!」
そんなダリアの恥ずかしそうな声に。
僕は苦笑を浮かべつつ、手を振って応じるのだった。
【2巻の発売まで、あと3日!】
当作品につきまして、第2巻が【7月30日】に発売されます!
web版の物語がさらに面白く伝わるよう、演出や展開が大幅に改善されています!
自分でも嫌になるくらい、何度も何度も見直したので、クオリティは高いはず(ノシ 'ω')ノシ バンバン
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