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おい、思った以上に壮大すぎるんだが

「シュアアアアアアアアア!」


 奇妙な雄叫びをあげながら、二体の異魔獣が突っ込んでくる。


「えっ……!」

「なっ……!」


 そのスピードに、アンとカーナは大きく目を見開いているようだったが。


「おっと……!」

「ソウハサセマセンヨ!」


 その二人を庇うようにして、僕とウィーンが異魔獣の攻撃を受け止める。


 僕は剣で。ウィーンは鉄棒で。


 ウィーンは通常モードのままだったが、この姿でも戦うことはできるようだな。

 異魔獣の攻撃を、さしたる問題もなさそうに防いでいた。


「は、速い……! 全然見えなかったんですけど……!」


 アンが思いっきり目を見開いていた。


 そう。たしかにいまのは速かった。


 さすがは現代の《指定ランク》の枠組みには収まらない異魔獣……

 あのジャイアントオークより各段に強い。


 さすがにヴァニタスロアには劣るが、驚くほどの強さだった。


「ウィーン。まさかこいつら、異魔獣のなかでは……?」


「ヨクオ気ヅキニナラレマシタ。コイツラ、異魔獣ノナカデハ、ザコ・オブ・ザコデス」


「ははは……そうか……」


 思わず乾いた笑みが浮かんでしまった。


 ジャイアントオークより明らかに強いこいつらが、異魔獣のなかでは雑魚の部類に入るとは……


 悪夢としか思えない状況だよな。


 アンは言わずもがな、カーナも王国軍では中堅に属する実力。


 その二人でさえ異魔獣をまったく捉えきれなかったとなると……なかなかに道のりは遠そうだな。


 だが、いまは……


 ――スキル発動。《チートコード操作》。

 使う能力は《対象の攻撃力の書き換え(中)》、これで二人の力を8倍に引き上げた。


「淵源流、一の型、真・神速の一閃……!」

「クライナサレ!!」


 僕とウィーンそれぞれの攻撃が、異魔獣に激突。


 ウィーンは可愛らしく体当たりをかましていた。一見するとたいした攻撃には見えないが、攻撃力が8倍になった以上、その威力は馬鹿にならないだろう。


「ギャォッ…………!」


 声にならない悲鳴をあげ、異魔獣は無数の光の粒子となって消えた。


 死体は残らない……みたいだな。


 むろん、原理はわからない。

 けど、現実離れした強さといい……普通の魔物とは色々と一線を画しているようだ。


「ウィーン。大昔、おまえが戦っていたときも、こんなのがいっぱいいたのか?」


「エエ。ソレハモウ、大勢イマシタヨ」


 そうなのか……

 正直、笑えない話だな。


 僕やウィーンはこいつらを瞬殺できたが、他の兵士たちはそうはいくまい。もし仮に異魔獣が大勢攻めてきたら、いまのアルセウス王国では対応しきれない。


 目下の課題は、アルセウス王国全体の戦力強化か。


「ウィーン。話せる範囲でいい。数千年前になにが起きたか……わかることを教えてくれないか?」


「エエ。モチロン、構イマセンヨ」


 幸いなことに、近くに魔物や異魔獣の気配はない。

 影石による《瞬間移動》にさえ気をつけていれば、襲撃の心配はないだろう。


 そう判断し、僕たちはウィーンの話を聞きながら先に進み始めるのだった。


  ★


「トハイエ、私モ大シタコトヲ知ッテイルワケデハアリマセン。ソノ上デ聞イテイタダキタイノデスガ……」


 先に進みながら、ウィーンがぽつぽつと語り始める。


 その内容は次の通りだった。


 これはいまから約二千年ほど前……

 世界では大規模な戦争が繰り広げられていた。


 アルセウス王国。

 そして――ヴァルガンド帝国の戦いだ。


 ヴァルガンド帝国は現在でもアルセウス王国に匹敵するほどに大きく、武力もほぼ拮抗している。王国軍が警戒している主な相手も、このヴァルガンド帝国である。


 昔はアルセウス王国も帝国の支配下にあった。


 これに異を唱えたのが初代国王オルガント。

 水面下で仲間を集めていた彼は、ファルアスとともに堂々たる《独立宣言》を行う。


 それが戦争の始まりであり――アルセウス王国が創設されたきっかけでもある。


 ……と、ここまでは誰しもが知っていることだ。


 まあ、自国が創設されたきっかけだからな。ここまでは多くの書物に書かれていることだし、僕もリオンから耳にタコができるくらい教えられた。


 ちなみにこの戦争自体は引き分けに終わる。


 当時の兵力は帝国のほうが圧倒的に強かったみたいだしな。それを引き分けただけでも、オルガントたちの功績は素晴らしいといえよう。 


 そして……晴れてアルセウス王国は独立を果たした。


 帝国とも《不戦条約》を結ぶことができたので、本質的にはアルセウス王国の勝利といえるだろう。


「ソシテ、ココカラガ本題ナノデスガ……」

 ウィーンの声が、心なしか暗みを帯びた。

奴ラ・・ニトッテ、アノトキノ平和ガ気ニ喰ワナカッタノデショウ。穏ヤカナ日々ハ、ソウ長クハ続キマセンデシタ」


 そうして現れたのが異世界人だという。


 先ほどの異魔獣を筆頭に、未知なる化け物が王国中に現れた。ヴァニタスロアやヴァニタスゾローガも、そのときに住民を苦しめた強敵だったらしい。


 帝国との戦いに疲弊していたアルセウス王国も、これには苦しめられた。


 なにしろ通常存在しない化け物だからな。

 苦労するのも無理はない。


「ソコニ光ヲ差シ込ンダノガ――女神ディエス様デス」

「女神ディエス……」


 なるほど……

 そこで女神の名が出てくるか。


「女神ディエス様ハ、コノ世界ヲ生ミ出シタ《管理者》デス。シカシナガラ、異世界人ハソノ世界ノ外・・・・・・カラヤッテキタ侵入者。ダカラ、オルガント殿ヤファルアス殿ニ協力スルコトニシタノデス」


「……はは、びっくりするくらいスケールがでかいな……」


 だけど、思い当たる節はある。


 僕に《チートコード操作》を授けたり、時を止めてみせたり……女神ディエスの力は常識の範囲を超えている。


 正直、まだまだわからないことはあるが……ウィーンの話はごく自然に受け入れることができた。


「ソシテ、女神様ニヨッテ戦場ニ出タノガ、私タチ《古代兵器》トイウワケデス」


 なるほどな……

 一応、ぼんやりと浮かんでいた疑問が一本の線に繋がった。


「簡単ナ説明ニナリマスガ、私ガワカルノハ以上デス」


「いや……ありがとう。なんとなく掴めてきたよ」


 僕はこれまで、多くの力を授かってきた。

《チートコード操作》に《原理破壊》、最近だと《裏チートコード操作》まで……


 だが、これから相対する敵はそれすら通用しない可能性があるわけだ。


 なにしろ、女神ディエスやファルアスをもってしても、《撃退》しかできなかった相手なのだから。


 その強さは……想像に難くない。


「異世界人ノ強サハ文字通リ異次元デス。後世ノ方ガ怯エカネマセンノデ、歴史ニハ残サズ……《おとぎ話》トイウ形デ現代ニ語リ継ガレテイルノデショウ」


 そういうことか……


 そしてきたる時代に備え、国王にのみ伝言を遺したり、《チートコード操作》を僕に託したり……


 色々と合点がいくな。


 しん、と周囲が静寂に包まれる。


 今の話を、アンもカーナも真面目に聞き入っていた。


「アリオス準元帥。いまの話、私にはあまり呑み込めませんでしたが……」

 そう言うカーナの声には、戸惑いのいろが帯びていた。

「あなたはいままで、それほどまで巨大な敵と戦ってきたのですか……? おとぎ話に登場するような化け物と……」


「うん。まあ……そうなるかな」


「な、なんと……!」


 いまにして思えば、王都の近くで現れたブラックグリズリーにも違和感がある。異様に大きかったジャイアントオークやヴァニタスロアは言わずもがなだ。


 となれば、僕はずっと異世界人と戦ってきたと――そういえなくもない。


「当初は、あなたのように若い方が準元帥とは驚いてしまったのですが……いまならあなたを心の底から尊敬できます。アリオス準元帥」


「いやいや。僕も修行中の身さ。異世界人に負けないよう、一緒に腕を磨いていこう」


「イエス・マイロード」


 深く頭を下げるカーナだった。


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