おい、棒読みされたぞ
「皆さんが体力を削ってくれてたので……いいとこ取りしちゃったみたいですね」
僕の発言に、カヤが「いやいや!」と突っ込む。
「そんなふうには見えませんでしたよ!? 一方的に追いつめてませんでした!?」
「いやいや。そんなそんな」
実際にも、ジャイアントオークの右足には多くのダメージが蓄積されていた。
ジャイアントオークを転倒させられたのはそのおかげ。
あれがなければ、鳳凰剣もプロミネンスバーストも当てられなかっただろう。断じて僕の功績ではない。
「しかも……君、さっき魔法使ってなかったかい?」
呆れ顔でそう言うのはユウヤ。
「あの魔法……上級の魔法使いでも発動するのに苦労しそうなんだけど……気のせいかな?」
「あーそれは……」
これにはぐうの音も出ない。
「気のせいですね。はい」
「そうかー、気のせいかー」
棒読みいただきました。
「父上の血を引いてますからね、ははは」
「そうか、マクバ家はそんなにすごいんだねー」
「はい、そうなんです」
「はあ……」
ため息をつくユウヤ。
「……まあなんでもいいんだけどさ。君が規格外だってことはわかったよ」
なんだか物凄く持ち上げられてしまった。
チートコード操作はたしかに強いが、僕なんて《剣聖》になれなかった出来損ないでしかないのに。
その後、僕たちはジャイアントオークの死体処理に入った。
カヤたちには「素材全部あげますよ!」と言われたが、さすがに遠慮しておいた。この戦いは、僕だけの功績じゃない。
その過程において、僕は奇妙なものを見つけた。
紅の宝石。
ブラックグリズリーの体内にあったそれとまったく同様のものが、ジャイアントオークの身体からも発見されたのだ。
カヤとユウヤに訊ねてみるが、二人もこんなもの見たことがないという。
不思議なことではあったが、念のためもらっておく。よくわからないものをカヤたちに押しつけるのも悪いしね。
そして剥ぎ取りが一通り終わった頃、ユウヤがカヤに頭を下げた。
「カヤさんも、ありがとうございました。ラスタール村からわざわざ応援してくださって……」
「いえ、いいのよ。活躍したのは私じゃないしね」
そう言ってチラリと僕を見るカヤ。
ん?
ちょっと待て。
ラスタール村から応援? カヤが?
「あ、そうか」
僕のきょとんとした表情に気づいたのだろう、ユウヤが口を開く。
「アリオス君もラスタール村に行くんだったね。通行止めも解除されるし、一緒に行ってみてはどうかな?」
「あら! そうなんですか!?」
カヤがぱあっと顔を輝かせる。
「アリオス君なら大歓迎ですよ! ふふふ、楽しみですね!」
図らずもラスタール村の住人と距離を縮められたようだ。
正直、不安だったからね。
新しい環境に馴染めるかどうかが。
その後、僕はいったん馬車に戻り、村でカヤと合流することにした。カヤも近くの安全地帯で馬車を待たせていたようだ。
「それじゃ。村でまた会いましょうね♪」
「はい。お願いします」
別れ際、カヤがぺこりと頭を下げてきた。Aランク冒険者にこんな態度をされると、なんだか背中が痒くなるな。
そうして、僕たちはいったん別れたのだった。