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おい、めっちゃ怖いんだが

 夜23時。

 国王との話も一通り終わった僕とレイは、ひとまず自室に戻ることにした。


「はぁ……っ」


 一日の疲れを投げ出すように、僕は思いきりベッドにダイブする。


 もふっ、と。

 さすが王城の寝具だけあって、ベッドは適度な弾力性で僕を受け入れてくれた。溜まった疲れが溶けていくようである。


「今日は……色々あったなぁ……」

「うん。ほんとそう……」


 そう呟くレイも疲れ気味だ。ベッドの端に腰かけ、だらんと肩を落としている。


 さすがのレイも大変だったみたいだな。無理もないが。


 その後、しばらく沈黙が続き。


「祝賀会……いつだったか」


 なんとなしに、僕がそう口を開いた。


「明後日って言ってたよ。本当は明日にも開催したいけど、さすがに準備が必要だからって……」


「はは……明後日でも急だと思うんだが……」


 だがまあ、国王の胸中もわからなくはない。

 異世界人はとにかく規格外だからな。

 一刻も早く僕を準元帥とすることで、すぐにでも盤石な体制を整えたいのだろう。その判断が間違っているとは思わない。


 ――僕個人としては、ここ最近の出来事が怒濤すぎて、理解が追いつかないけれど。


「ふふ……でも、そっか。アリオスも元帥かぁ」

 そう言いながら、レイは僕の隣に横たわる。

「ちょっとずつ、アリオスの功績が認められてきてよかったよ。一時はどうなるかと思ったけど……」


「ああ。それは本当にな……」

 苦笑を浮かべて言う僕。

「でも、準元帥って軍のトップみたいなもんだしな……。軍務にはつかないみたいだけど、ちょっと実感湧かないというか……」


 実際、僕はいままで通り普通の生活を送るだけでいい。

 兵士に指示を出すのは僕の仕事ではないし、長時間拘束されることもない。


 実質、いままでの冒険者生活とそこまで変わらないんだよな。異世界人の動向を探るのがメインの行動になってくるわけだし。 


 とはいっても……

 それでも、不安はつきまとう。


 僕に準元帥なんて務まるのか――と。


「アリオス。それは……私も一緒だよ」

 ふいに、レイがぽつりと呟いた。

「あくまで王太女だし、すぐに女王になるわけじゃない。だけど……怖い。私の判断ひとつで、国が大きく変わるんだから……」


「レイ……」


 そうか。

 そうだよな。


 不安でいえば、彼女のほうがよっぽど大きいだろう。国を背負って立つ責の重さは、僕には想像もつかない。


 それでも――彼女は決めたのだ。

 レイファーが失脚したいま、国を守り抜けるのは自分しかいないと……


「だから……アリオス。一緒にみんなを守ろうよ。お互い不安だと思うけど、二人で力を合わせれば、きっとできると思う」


「そうだな……二人で、か」


 思えばずっと僕たちは一緒だった。

 剣聖の道が閉ざされ、マクバ家を追放されることになっても。それでも、僕たちはともに同じ道を歩んできた。


 それは――数千年前から続く縁なのかもしれない。

 かつてオルガントとファルアスが国を造り上げたように、僕とレイも同じ道を進んでいるような気がする。


「くっ……早うくっつかんか!」


 ふいに聞き覚えのある声が聞こえてきたのはそのとき。


「…………」

 僕はふうとため息をつくと、視線を横に向ける。

「なるほど。さっきから感じていた妙な気配はあなたでしたか。――オルガント初代国王陛下」 


「ぎくぅ!? バレてた?」

 

「……だから辞めろと言ったろうに」

 続けて聞こえてきたこの声は――ファルアスか。

「何度もいうが、アリオスの気配察知能力は、この私でさえ目を見張るものがある」


 どうやら、二人して僕たちのことを見ていたようだな。ファルアスのほうは好き好んでそうしていたわけではなさそうだが。


 シュウイイン……と。

 ほのかな音をたてながら、二人の姿が実体化する。相変わらず身体は透けて見えるが、間違いなく初代国王、そして初代剣聖の姿だ。  


「…………」

「…………」


 黙り込む僕とレイに、初代国王が両手をぶんぶん振る。


「いやいや、違うのだよ。余はそなたらを見守ろうとしててな……」

「そうですか……」


 まあ、そういうことにしておこう。

 お世話になっているのは間違いないし。


 ため息をつく僕に、ファルアスも同じようにため息をつく。 


「すまんなアリオス。見守ろうとしていたのは本当だ。同志A――フェミアといったか。異世界人の気配を感じたのでな」


 そのフェミアは、二人が姿を現すまでもなく僕が撃退した。


 そしてそのまま――なんか《良い雰囲気だったらしい》僕たちを、オルガントがちょっと見ていこうぜ的なノリでついてきたらしい。


「ご、ご先祖様……」


 あのレイですら呆れ顔である。 


「レイミラとやら。オルガントは昔から女たらしでな。こいつなりに頑張ってはいるから、許してやってくれ」


「なんだとファルアス! おまえこそ、経験がなかったくせに女を引きつけておっただろうが!!」


「む? なんのことだ?」


 あっけらかんとするファルアス。


 なるほど。

 これはずばり――


「モテてることに気づいてなかったんですね、ご先祖様は」


 どうだ。

 我ながら名推理である。


「…………」


 しかしながら、今度はレイがジト目で睨んできた。


 なんだ。

 めっちゃ怖いんだが。


「アリオス。おまえも大概だのぅ……」


「え? なんのことですか?」


 ため息混じりにオルガントが呟くが、僕にはなんのことだかわからなかった。


「「はぁ……」」 


 オルガントとレイが同時にため息をつく。


「レイミラよ。お互い苦労は多そうだな……」


「ええ、まったくです……」  


「ふぅ……もう用件だけ手短に伝えるぞ」

 相変わらず呆れ顔のオルガントが、疲れたように続ける。

「……さっきも言ったが、異世界人はしばらく現れん。兆候を感じたら伝えるから、それまでしばし待っててくれ」 


「はい……わかりました、ご先祖様」


 このようなドタバタをもって、今日という一日は幕を閉じたのだった。

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