表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

136/188

おい、これがレイの父親か

「ふう……退いてくれたか……」


 大きなため息をつき、僕は剣を鞘に納める。


 どっと疲れたな。

 同志A、並びにフェミア・ラ・アルセウス。

 あの強さは尋常ではない。


 さっきはなんとか互角に戦えたが、あれ以上の力を持ってる可能性もあるからな。いままでの敵とはなにもかもが違いすぎる。


「アリオスーーーーっ!」


「おおっと!」

 ふいに柔らかな感触に包まれ、僕はしどろもどろになった。

「レ、レイ……!」


「よかった……。無事で、本当に良かった……!」


「大丈夫さ。そんなに心配しなくてもぐっ……」


 語尾がどもってしまったのは、レイの胸部に顔を押しつけられたからだった。


「怖かった……。あんな化け物と戦って、アリオスがいなくなったらどうしようって……」


「ふがふが……」

 ぎゅっと押しつけられ、返答することもできない。

「レ、レイ……」


「え?」


「苦しくて死にそうなんだが……」


「あっ、ごめん!」


 ぱあっと顔を赤くしたレイが、慌てた様子で両腕を離す。


 危ない危ない。

 フェミアではなく、レイに殺されるところだった。


「ふふ。あなたたちは、昔からずっと仲良しですね……」


 そんな僕たちを、国王がどこか微笑ましそうに見つめていた。


「そうですね……おかげさまで」


 答えつつも、僕は改めて周囲の気配を探る。


 ――誰もいない、か。

 あちこちを巡回している兵士はいるようだが、まあ、これは不審者じゃないしね。


「ふぅ……」

 僕はそこで集中を切ると、国王に視線を戻した。

「陛下がレイと僕を任命した理由……やっとわかった気がします」


「む……?」


「フェミアを初めとする異世界人が迫りつつあることを、陛下は知っていたんでしょう。ですが、奴らはマヌーザのみならず、レイファー殿下までをも取り込んでいた。……いつの間にか、手出しができなくなっていたのではありませんか?」


「…………」


 国王はそこで深く頷くと。

 くるりと身を翻すや、ゆっくりと歩き出しながら言った。


「ええ。私はこれでも国を任される身。初代国王から、《異世界人》のことは聞かされていました。ですが、相手のほうが一枚上手だったようですね……」


 それは仕方のないことだろう。


 フェミアは人の記憶や情報すらも書き換えることができる。さっきだって、魔導具の結界を当たり前のように破ってきたしな。


 まさに常軌を逸した力といえよう。

 いかに国王といえど、それに立ち向かうのは困難だろうな。


「……あのレイファーも、私の知らないところで大成長していたようですね。彼の策略によって、私は自由を失ったも同然でした」


「陛下……」


「……以前までは、レイファーに次期国王を頼むつもりでした。彼の才覚は、きっとあなたたちも思い知ったところでしょう」


「ええ……それはもう、痛いほどに」


 ラスタール村の襲撃とかな。

 オルガントやファルアスがいたから切り抜けられたものの、下手したらあれで詰んでいた可能性もあるわけだ。


「ですから、異世界人との戦いも、レイファーとともに乗り越えるつもりだったのですよ。……しかし、それは敵わなかった。もしかすれば、それすらも異世界人の狙いかもしれませんが……」


 そう言うなり、国王はまたも身を翻し、レイの瞳をまっすぐに見つめる。


「ですが、我が国にはもうひとり、有望な王族がいるのです。……レイファーが失脚したいま、異世界人を破り、その先我が国を託せるのは……レイミラ。あなたしかいない」


「お父様……」


「もちろん、これには危険が伴います。異世界人が襲ってこないとも限りません。ですから――」

 今度は、僕に国王の視線が据えられる。

「レイを守る最強の剣士として……アリオス殿。あなたを指名したのですよ」


「陛下……身に余る光栄です」


 腹部に右手をあてがい、小さなお辞儀をする。


 ――ここまで言われてしまっては、さすがに受けざるをえまい。


 異世界人の恐ろしさは思い知ったばかりだからな。

 真の剣聖となるためにも、できることは力になっておきたい。最強の剣士というのはおこがましいけれど……


「もちろん、ただでとは言いませんよ。さっきも申し上げた通り、これは危険を伴うもの。よってアリオス殿には、軍の総司令官として――元帥げんすいの立場を授けましょう」


「げ、元帥!?」

 おい、さすがに目が飛び出たぞ。

「さ、さすがにそれは恐れ多いですよ! 僕は個人で戦ってきただけで、軍略にはまったく……」


「ふふ、わかっていますよ。なにも軍人になれと言っているわけではありません。正確には、あなたの階級は準元帥。元帥としての軍務は、あくまでいまの元帥にやってもらいます」


「…………?」


 ん? どういうことだ?


「……アリオス殿は異世界人の動向を探りつつ、必要であれば王国軍を動員できるようになってほしいのです。ですから、軍に縛られることはありませんよ」


「…………」


「もちろん、待遇は通常の元帥より弾みます。どうですか? 悪くはないと思うのですが」


「いや、いやいやいや……」


 悪くはない――どころの話ではない。


 好待遇すぎて怖いんだが。

 その気持ちを伝えると、国王は「いえいえ」と首を横に振る。


「異世界人と比べれば、周辺諸国の脅威などたいしたものではありません。国を守るために軍を動員するのは当然ではありませんか?」


「いやしかし、僕は剣の道しか知らないのですよ? そんな僕が……」


「そんなアリオス殿だけが、影石や情報操作の影響を受けないのでしょう?」


 うぐっ。

 さすがは口がうまいな。

 現代国王にしてレイの父――その手腕は伊達ではない。


 たしかに現段階において、異世界人と張り合える人間はそう多くないだろう。なにより、あの《情報操作》が厄介だ。


 そして、異世界人が僕一人では対応しきれないのも事実……


 僕は内心でため息をつきながら、国王に短く頭を下げる。


「……承知しました。不肖アリオス・マクバ――まだまだ未熟者ですが、精一杯、国を守っていこうと思います」


「おお、そうですか!」

 国王はにかっと笑うと、そっと僕の肩に手を置いた。

「ありがとうございます。――これからよろしくお願いしますよ、アリオス準元帥」


 

 


【本日、好評発売中です(ノシ 'ω')ノシ バンバン】


※下記の表紙画像をクリックで、作品紹介ページを経由して販売サイトへ行けます!


ぜひ、よろしくお願い致します。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 「コミカライズ一巻」が【 2022年9月30日 】に発売されます! 下記の画像クリックで書報ページに飛べますので、ぜひ今のうちに予約してくださいますと幸いです!▼ 明日9/30、チートコード操作のコミカライズ一巻が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下の画像クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ