おい、偉大すぎるんだが。
本日、書籍発売日です!(ノシ 'ω')ノシ バンバン
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僕は同志Aの一挙手一投足を見逃すまいと、全神経を集中する。
同志A――
いわく、世界の土台を作り上げた者。
いわく、ありとあらゆる情報を操作できる者。
奴の強さは、いままで出会った敵とは根本的に異なる。
戦う前から負けることが決まっているかのような――まるで別次元に生きているような。
そんな強敵に真っ向勝負をしかけるなんて、我ながらどうかしている。
だけど、だからって逃げるわけにいかなかったんだ。
レイの護衛として。
そして、真の剣聖となるために――!
「真っ直ぐな目をしておるな。意気やよし」
同志Aはそう言うなり、暗黒の剣を上空に掲げる。
「はっ!」
瞬間、周囲の空間そのものが変化した。
さっきまで王城の晩餐室にいたはずが、一瞬にして見知らぬ場所へ。
「ここは……」
地平線まで真っ白な空間が続いており、見渡す限りなにもない。ただひたすらに《無》だけが続く。
「空間転移ってやつか……」
僕の《原理破壊》でも似たようなことができるが、いま僕はなにもしていない。そもそも転移できる範囲は限られているしな。
「ふん」
同志Aはつまらなそうに鼻を鳴らして言った。
「……まあ、王城ではまともに戦えぬからな。ここで剣を交えるのがよかろう」
「おまえ……」
王城に被害が及ばないよう配慮したのか……?
僕たちが全力で戦うともなれば、たしかに王城への被害は計り知れないが……
「あんた……どうして……」
レイも戸惑いを隠せない様子だった。
そりゃそうだよな。
いまに始まったことではないが、同志Aの行動には一貫性がない。
すべてにおいて、謎だらけなんだ。
ただわかるのは――信じられないほどに強い敵だということだけ。
「…………」
僕は無言でスキル《チートコード操作》を起動する。
―――――――
使用可能なチートコード一覧
●戦闘用
・攻撃力アップ(小)(中)
・火属性魔法の全使用
・水属性魔法の全使用
・無属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)(中)
・吸収
・無敵時間(極小)
・古代兵器召喚(一)
・対象の経験値蓄積の倍加
●非戦闘用
・性転換の術
――――――
同志Aに対しては、いかなる手加減も無用だろう。全力であたらねば、こちらの存在が消されかねない。
まず使用するのは攻撃力アップ(中)。
そのうえで《対象の攻撃力書き換え》を行い、力を10倍に引き上げる。
このコンボであのヴァニタスゾローガを倒したもんな。もちろん同志Aのほうが格段に強いが、通じないことはないはず。
あとのチートコードは適宜使うとしよう。魔法をぶっ放す前に、まずは同志Aの出方を窺いたい。
「はぁあぁああああっ!!」
気合いの声を発し、僕は全身に力をいれる。
ゴォォォォォオオ! と。
僕から発せられた衝撃波が、空間そのものを大きく揺らす。すさまじいまでの振動が、容赦なく同志Aを襲う。
「むっ……!」
片腕で顔面を覆いながら、同志Aが呻き声を発した。
「これは驚いた……! ヴァニタスゾローガでは勝てぬわけだ」
「同志A。容赦はしないぞ……!」
「くっ。ははは。ははははははは!」
両腕を広げ、愉快そうに笑い出す同志A。
「面白い。当代最強の剣士よ……。かかってくるがいい!」
当代最強の剣士。
またも信じられない言葉が出てきたが、いま気を取られては駄目だ。
同志A。
常識の通じない敵を前に、いかなる油断も許されない……!
「アリオス! 負けないで!!」
レイの心のこもった応援を期に。
僕は勢いよく地を蹴った。
そのままありったけの力を込め、同志Aとの距離を詰める。
かつてのヴァニタスゾローガは僕の接近にまるで気づいていなかったが、同志Aは違った。
ガキン! と。
僕の振り下ろした剣が、暗黒の剣によって受け止められる。
「おおっと……」
だが、衝撃までは吸収しきれなかったようだ。
僕の剣を受けきった同志Aが、踏ん張りながらもやや後退している。地面が大きく抉れ、同志Aの下だけ大きな穴が開けられる。
「すさまじい攻撃力だ……! この世界に、まだこれほどの人間がいようとは……!」
「おかしな奴だ。なぜそんなに笑っていられる……!」
「嬉しいのだよ。ただただ、単純にな……!」
「そうか。それは光栄なことだ……!」
その後は目まぐるしい剣の応酬が続いた。
僕が全力を込めた攻撃は、すべて弾かれるか避けられる。
だがそれは相手も同じこと。
同志Aの攻撃にも、僕は追いつくことができた。あまりにも信じられない速度で、一瞬たりとも油断することはできなさそうだが――それでも、ついていけないことはない。
鳴り響く金属音。
舞い散る衝撃波。
これらによって、周囲の空間は明らかな変貌を遂げていた。地面にはところどころ大きな穴が穿たれ、そのせいであちこちに塵が舞っている。
「こ、これはすごい……」
「なにが起きてるかわかんないですけど……!」
戦いを見守る国王とレイが、感嘆の声を発しているのが聞こえた。
そんなレイに、同志Aは一瞬だけ視線を送ると――再び僕に顔を戻す。
「実力やよし。では、こちらの《試し》はどうかな」
パチンと。
同志Aが空いた手で指を鳴らした瞬間、僕の全身が闇色のオーラに包まれた。
「これは……まさか……」
「クク、お察しの通りだ」
僕から距離を取り、余裕そうに笑い声をあげる同志A。
「いくら剣の才があろうとも、我らは対象の情報を書き換えることができる。これに対処できぬ限り、貴様に勝ち目はない」
「くっ……」
「安心しろ。殺しはしない。さっきの国王のように、しばし赤ん坊になってもらうだけさ」
――しかし。
僕にはなにも起こらなかった。
そのまま静かに時が流れ、シュウウウウウという空しい音ともに、闇色のオーラが消えてしまう。
「なに……!?」
これに一番驚いていたのは同志Aだった。
「情報の書き換えができない……? なぜだ……?」
「いや、それは僕が聞きたいところだが……」
とはいえ、ひとつだけ心当たりがあった。
いまの闇色のオーラは、影石の力とまったく同じ。
その影石は、僕が持っていれば原則として暴発しない。
そして影石は、異世界人の力を凝縮させたもの。
ここから導かれる答えは……ひとつ。
「はは……これが母の力ってやつなのかな……」
本当に、すごいご先祖様たちだ。
こうなるのを見越して、ずっと準備してきたんだろう。
「……なるほど」
同志Aも同様の結論に至ったらしい。
初めて、怒りの感情を露わにした気がした。
「女神め……! なんと小賢しいことを……!」
そして現在が、絶好の攻撃チャンス。
この好機なくして、同志Aに勝つ術はない――!
「おおおおおおおっ!!」
僕は気合いの一声とともに地を蹴る。
――淵源流。一の型。
真・神速ノ一閃――!
「ぬおっ……!」
僕の振り払った刀身が、見事に同志Aの兜を捉えた。
直撃。
手応えありだ。
「くっ……!」
これ以上の追随を許さぬよう、すぐに後退したのはさすがというべきか。
だが、兜は完全に壊れてしまったようだな。
パキパキパキ……という乾いた音を発しながら、同志Aの風貌を完全に晒しだした。
「お、お母さん……!」
レイの大きな声が響きわたった。
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