おい、急すぎるんだが。
一連の事件はひとまずの決着を見た。
ちなみに、帰り道はオルガントが用意してくれた。彼が紅石を掲げたことにより、次元を行き来する扉が誕生したのである(もちろん一方通行だったが)。
これにより、僕たちはわざわざ入り口に戻らずとも、すぐにアルセウス王国に帰還することができた。もちろん、レイファーとマヌーザも一緒だ。
ちなみにだが、ヴァニタスゾローガを倒したためか、僕は思わぬチートコードを得た。
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使用可能なチートコード一覧
●戦闘用
・攻撃力アップ(小)(中)
・火属性魔法の全使用
・水属性魔法の全使用
・無属性魔法の全使用
・対象の体力の可視化
・対象の攻撃力書き換え(小)(中)
・吸収
・無敵時間(極小)
・古代兵器召喚(一)
・対象の経験値蓄積の倍加
●非戦闘用
★性転換の術
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――性転換の術。
これである。
さっきまで『○○○の○』とかいうチートコードがあったんだが、これが解放されたってことだろうか。
いつの間にか非戦闘用の能力が加わってるし。
……これ、使い道あるのだろうか?
性転換って、字面だけで判断するのであれば、そういうことだよな?
そして。
「アリオスさん……お待ちしておりましたよ」
一番に出迎えてくれたのは、なんと現代国王のユーフェス・シア・アルセウスだった。
僕たちのことが心配で、レイファーの部屋でずっと待っていてくれたらしい。身体はあまり強くないようだが、国民思いなところはさすがだな。
「――さて、あなたたちも護衛ありがとうございました。もう行ってよいですよ」
「イエス・ユア・マジェスティ」
ユーフェスを護衛していた兵士らが、一寸乱れぬお辞儀をして退室していく。言わずもがな、第19師団ではない兵士たちだろうな。
兵士等を見送ったあと、ユーフェスは優しげな笑みを僕たちに向けた。
「さて、色々お聞きしたいことがありますが、まずはお座りになってください。かしこまる必要はありません」
見れば、僕たちの分の椅子がきっちり用意されていた。
その配慮はめちゃくちゃ有り難い……のだが。
「おや。人数分足りませんね」
きょとんと目を丸くする現代国王。
まあそりゃそうだ。
初代国王と別れてから、人数がかなり増えたしな。あのときは僕らAチームしかいなかったし。
「困りましたね。部屋の外に行って、兵に持ってきてもらいますか」
「いいですよお父様。私が頼んできます」
そう言ったのはレイミラ・リィ・アルセウス。
聞いた通り、レイは現代国王と仲が良いからな。国王に対して、そこまで恐縮している様子がない。
数分後。
やっと全員が腰を落ち着かせたのを見計らって、ユーフェスが口を開く。
「皆さん、まずはありがとうございました。あなたがたは、紛うことなき我が国の英雄です」
「いえいえ……そんな」
僕は後頭部を掻きながら答える。
英雄。
国王にそこまで言われるなんて、かなりこそばゆいな。
「みんなで力を合わせたからこそ、事件を解決できたと思います。今回もかなり助けられました」
「あらアリオス。なに言ってるの?」
レイが不思議そうに目を丸くする。
「たしかにみんなの力もあるけど……でも、一番すごかったのは間違いなくアリオスだと思うよ」
「おい」
このくだり、また始まったぞ。
「だってさ、小国を滅ぼすっていうヴァニタスゾローガを簡単に倒すんだもんね。ダドリーやエムちゃんもすごかったけど」
「なんと。アリオスさん、それは本当ですか」
「いや……えっと」
目を輝かせるユーフェスに、僕は答えに窮する。
そうして戸惑っている間に、エムが
「はい! アリオスお兄ちゃんが一番すごかったです!!」
と元気よく言ってしまった。
「それはそれは素晴らしい……。次期女王の護衛騎士にぴったりだ」
なんか話がめちゃくちゃでかくなってる気がするんですが。
「こほん。そ、それはさておき」
僕は咳払いすると、無理やり話題を変えることにした。
「お城の様子はどうなってるんですか? たしか第19師団が暴れ回っていたと思いますが」
「おっと。はい……そうですね。その話からしましょうか」
ユーフェスは姿勢を正すと、僕たち全員を見渡し、表情を改める。
「現状は落ち着きを取り戻しています。事件当時は、レイファーの計らいで他の師団が王都から遠ざけられていたようですが……。無事に間に合い、第19師団を拘束し終えました。幸いなことに、被害も軽微で済んでおります」
「そうですか……。それは良かった……」
これは間違いなく、カヤたちBチームの功績だろうな。
彼女たちが兵士らを倒してくれていたからこそ、無用な犠牲者を出さずに済んだのだと思う。
「……ですが」
僕が一息ついていると、ユーフェスの表情がやや険しさを帯びた。
「すべてが解決したかと言うと、残念ながらそうではありません。被害は軽微とはいえ、相当な騒ぎになってしまいました。怪我をしてしまった者もなかにはいます。――そして、その事件の首謀者は他ならぬ第一王子でした」
言いながら、現代国王はレイファーにちらりと視線を向ける。
「…………」
レイファーは椅子にもたれかかったまま、まだ起き上がる気配もない。さっきからずっと気絶しているのだ。
「間違いなく、我がアルセウス王国に激震が走るでしょう。次期国王と目されていたレイファーが不祥事を起こしたのですから、騒ぎにならないはずがない」
「それは……そうですね」
残念ながらユーフェスの言うとおりだろう。
いくら異世界人に洗脳されていたとはいっても、レイファーの犯した罪に変わりはない。
次期国王になるのは……残念ながら厳しいだろうな。
「お父様……えっと、お兄様はどうなるんですか?」
「牢獄行きですね」
戸惑いがちに訊ねるレイに、ユーフェスは硬い表情を崩さぬまま答える。
「さすがに極刑になるわけではありませんが、詳しく調査した後、しかるべき処分が下ると思います。レイファーがこの城の床を踏むことは、二度とないでしょう」
「…………」
「レイファーになにかしら理由があったことは、私もなんとなく察しています。ですが……身内だからといって甘やかすわけにもいきません」
それは……致し方ないとはいえ、空しいことだな。こればっかりはどうしようもないか。
「しかし!」
暗くなった雰囲気を打ち消すかのように、ユーフェスがいきなり両手を叩く。
「そうネガティブな話ばかりではありません。たしかにレイファーは失脚してしまいましたが……その代わり、我が国には素晴らしき英雄がいる」
そしてユーフェスはくいっとレイに視線を向ける。
「レイミラ。さっきの約束を覚えていますか?」
「約束……?」
「ええ。レイファーの陰謀を阻止した暁には、次期女王になるという約束ですよ」
「は……はい。ってまさか、お父様……」
「そうです。レイファーの件は残念ですが、同時にあなたを王太女とすることで、再建を計りたいと思います」
マ……マジか。
王太女というのは、王位継承権を持つ者のことを指す。
つまり、ユーフェスから正式に次期女王になることを認められたわけだ。
すごい急に感じるけど……でも、初代国王にも同じこと言われてたもんな。レイファーがいなくなったいま、たしかに次期女王にうってつけなのは彼女かもしれない。
「そして!」
ユーフェスがビシッと僕を手差しする。
「そんな王太女の護衛を――アリオス・マクバさん。あなたにお願いしたいと思っております」
「な……え、ええ!?」
今度こそ吃驚仰天した。
ということは……あれか。
――僕の夢が叶うってことか。
マクバ家は失墜してしまったけれど、こんな形で実現するとは……
「……もちろん、無理にとは言いません」
ユーフェスは椅子から立ち上がると、こつこつと歩きだし、僕たちに背を向けながら続ける。
「ですが、私は確信しています。知略に優れたレイミラと、剣聖たるアリオス殿。――この二人こそが、我が国を導くに最適な人材であると」
そして僕たちを振り返るなり、優しげな笑みを浮かべて言った。
「さあ、今日は疲れたでしょう。今日はおもてなししますので、ぜひお城に泊まっていってください。レイミラにアリオス殿も、いまの件、考えていただけると幸いです」
【皆様にお礼を(ノシ ;ω;)ノシ バンバン】
※下記の表紙画像をクリックで、作品紹介ページを経由して販売サイトへ行けます!
チートコードの予約を入れてくださった方、本当にありがとうございます!
もう感謝感激です!
めちゃくちゃ嬉しいです(ノシ 'ω')ノシ バンバン
本作ですが、1月30日に、モンスター文庫様より発売されます!
……が、発売日変更にならない限り、おそらく緊急事態宣言と被ってしまいます。
このままでは危ないです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン
予約していただけると、めちゃくちゃ助かります。
嫌になるくらい何回も原稿見直して、さらに編集さんからいただいた赤でかなり改良されてます。
ですから自信を持って、《絶対面白い!》と断言できます(ノシ 'ω')ノシ バンバン
それなのに書店に並ばないのはだいぶメンタル的にアレです(ノシ 'ω')ノシ バンバン
ぜひ、よろしくお願い致します。




